銀座進出した無印良品 高級百貨店ひしめく中で輝く深いワケとは?:繁盛店から読み解くマーケティングトレンド(1/4 ページ)
無印良品が4月、東京・銀座に大型店舗オープン。集客で好調なスタートを切った。高級百貨店ひしめく中で存在感を増す理由とは?
東京・銀座に4月、無印良品を展開する良品計画が旗艦店となる「無印良品 銀座」(東京都中央区)をオープンしました。比較的安価な価格帯の商品が中心の無印良品が、高級百貨店の最も集中するエリアに出店した訳ですが、4月の来店客数は30万人を超え、その後も同程度の客数を維持しています。 同社側は、従来の年間の来店客数目標である230万人を超える、年間300万人も視野に入れています。
銀座店の特徴は、多種多様な客層を集客しようとしている点です。地下1Fから地上10階(MUJI HOTEL GINZA含む)まで。従来の無印良品の商品に加えて飲食フロアやベーカリー 、オーダー家具や、さらにはアートスペースやホテルまで取りそろえている同店。もはや「無印百貨店」と言ってもいいほどの総合的な品ぞろえの店舗になっています。
一方で銀座には、多くの老舗百貨店が軒を連ねています。しかしその実態を見ると、売上は1990年をピークに毎年減少を続け、インバウンド需要がなければ厳しい構造不況業種となっています。地方では、閉店を決める百貨店も後をたちません。 中合棒二森屋店(北海道函館市)、コレット井筒屋(北九州市)、中三青森店(青森市)などの地方老舗百貨店も店を閉め始めました。従来型百貨店の特徴であった総合的品ぞろえの店は時流に合っていないのではないか? とさえ感じます。
総合的な品ぞろえの百貨店が苦境に陥っている中で、無印良品が総合的な品ぞろえの店として銀座で挑戦を始めたのはなぜか。高級小売りばかりの銀座にあえて出店した無印良品の店づくりから、百貨店をはじめとした日本の成熟した小売業の進むべき道を解き明かします。
「銀座」ならではの苦労
無印良品 銀座(以下、無印銀座店)は銀座3丁目の読売並木通りビルに入居しています。同ビルの地下1階から6階までが無印良品。6階にMUJI HOTELのフロント、7階から10階に同ホテルが入っています。フロアごとの面積は小さめですが、無印良品の部分だけで面積は約3981平方メートルと、もともと有楽町にあった無印良品より広い大型店舗です。
無印銀座店が特に工夫しているように見受けられるのは、客の「回遊性」です。例えば同店の特徴として、他の無印良品の既存店より「多層階である」という点が挙げられます。しかし、小売店にとって多層階というのは回遊性を妨げる一番の課題なのです。
従来の百貨店で考えたら、縦に伸びる建物で売り場を展開している多層階の構造こそが「標準的な店舗形態」です。しかしこれは、低階層が中心の無印良品では特別な形態です。特に銀座店のオープン前まで近隣で営業していた有楽町店は比較的低層階の店舗で、顧客も複数の売り場を回遊しやすいという特徴がありました。
しかし、銀座店はそれに代わる大型店という位置付けですので、銀座という地価の高い場所で同程度の売り場面積をとろうとすると、どうしても多層階にせざるを得なかったわけです。
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