LIXILのIT部長が“真逆の世界”で見たもの――「Webベンチャーの最先端」は、伝統的な製造業で通用するのか:長谷川秀樹の「IT酒場放浪記」(1/3 ページ)
自由なWebの世界から、なぜ、あえて伝統的な大会社へ? ITの便利さを伝えるべく、DMM.comラボからLIXILに転職した男が見たものは!?
元ハンズラボCEOで、現在メルカリのCIO(最高情報責任者)を務める長谷川秀樹氏が、志高きゲームチェンジャーと酒を酌み交わしながら語り合う本対談。今回のゲストは、元DMM.comラボ(現合同会社DMM.com)情報システム部 部長で、2018年、水まわり製品と建材製品を開発、提供するグローバル企業、LIXILに転身した岩崎磨さん(IT部門 システムインフラ部 部長※取材時 現IT部門 基幹システム統括部 統括部長 兼 システムインフラ部 部長)です。
なぜ、あえて自由闊達なWeb系ベンチャーから伝統的な製造業に飛び込んだのか? 岩崎さんは今、ベンチャーと老舗企業の文化の違いに相当、苦労しているのでは?――。岩崎さんとは逆に、東急グループという伝統的大企業から新興ベンチャー企業に移った長谷川さんが、その真相に迫ります。
氷河期時代の学生起業を皮切りに8つの会社、2回の倒産を経験
長谷川: 岩崎さん、LIXILに至るまでは、どういうキャリアを歩んでこられたんですか?
岩崎: 大学の卒業が1999年で就職氷河期の真っ只中だったんですけど、そのタイミングで共同で会社を始めたんですよ。
長谷川: サラリーマンから始まったんじゃないんだ?
岩崎: そうなんです。就職活動しなかったんで卒業式の3日前まで髪が腰まであって、卒業式のために髪を切ったくらいで。
長谷川: 何の会社を始めたんですか?
岩崎: 当時はまだインターネットバブルの時代だったので、大学のゼミで会った教授とゼミ生と一緒にダイヤルアッププロバイダーを始めました。
長谷川: ダイヤルQ2じゃなくて?
岩崎: じゃなくて(笑)。学生ベンチャー支援基金みたいなものを利用して、アカデミック向けのサービスであればそれなりにパイがあるだろう……くらいの考えでアカデミック向けのプロバイダーを作り、結果的に3年で終わりました。そういう、むちゃなことからスタートしたんです。
その後、プロバイダーを作った経験を生かしていろいろなケーブルテレビ会社のインターネット事業を作るという仕事をやりました。いわゆるネットワークエンジニアの仕事ですから、それが今のキャリアにつながっているんです。
長谷川: じゃあ、そこからDMMに?
岩崎: いや、実は僕、LIXILで8社目なんですよ。
長谷川: 8社目!? 全部聞いてると長くなりますね。ちょっと端折っていきましょう(笑)
岩崎: はい。関西のケーブルテレビ会社でインターネット事業や地域向けの通信事業、データセンター事業を立ち上げたりして「いけんじゃね?」という感触を得たので、もともとお客さんだった会社でネットワーク事業を作ることにしたんですけど、その会社が倒産しました。
僕、最初の会社とそれとで2回倒産を経験してるんですよ。で、路頭に迷って転職活動をし、東京に出てきて楽天に入社しました。
長谷川: 楽天にいたんですか!
岩崎: 2010年のことです。次世代インフラを作るというプロジェクトで経験を積ませてもらい、そこからリクルートに転職しました。
長谷川: リクルート!
岩崎: 半年しかいなかったんですけどね。リクルートに行ったタイミングでDMMの亀山敬司会長とご縁があって、「楽天辞めてリクルート行くんだったら、うち来ない?」って言われたので「はい、行きます」と……。それでDMMでITやインフラをやらせてもらい、LIXILに来たのが約1年前です。
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