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「絶滅危機」のウナギ、真の復活への道とは「土用の丑の日」に憂う【後編】(5/6 ページ)

明日7月27日に、ウナギ業界最大のイベント「土用の丑の日」を迎える――。お祭り騒ぎの舞台裏を支えるのは、台湾から香港を経由した稚魚の密輸である「ウナギロンダリング」や、暴力団が関与した密漁であることは「公然の秘密」だ。長年にわたってウナギを初めとした資源管理政策を研究してきた気鋭の研究者が、業界の闇に切り込む3回シリーズの最終回。

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流通・消費者の取り組み

 最後に流通・消費者の役割だ。例えば日本最大手のスーパー、イオンは6月3日、静岡県と浜名湖養魚漁業協同組合などとの協力を得て、大手小売業界で初めて完全にトレーサビリティーを確保した「静岡県浜名湖産うなぎ蒲焼」を発売した。インドネシア産のビカーラ種ウナギの蒲焼とともに完全トレース品として販売している。

 イオンによると、中国でも、浙江省寧波や江蘇省南通など、一部の地方で採捕されたシラスウナギを使い、稚魚の産地まで分かる製品生産のめどが立ったとして、インドネシア産10%、静岡産5%と合わせ、40%がトレーサビリティーを確保した製品として販売可能と解説し、23年までに全てのウナギ商品の完全トレース化を目標としている(水産経済新聞19年6月4日)。

 われわれ消費者も、トレーサビリティーが確保されたウナギを買うといった購買行動によって、業界へ影響を与えることができる。

 消費者は、購買という選択に加えて、SNSなどでの意見表明によっても、持続可能なウナギ利用に貢献できる。例えば高知県は、極端なシラスウナギ不漁に見舞われた18年、3月5日までの漁期を20日まで15日延長(高知新聞18年2月28日) 、鹿児島県も3月10日までだった漁期を3月末まで21日間延長した(南日本新聞2018年3月11日) 。

 これに対しては高知県の関係者も「(シラスウナギを)取らせたくない方々から相当な批判を受けて『炎上』した」と認めるほどSNS上で批判が集まった。今年もシラスウナギ漁は前年を下回る不漁に終わったが、採捕期間は延長されていない。SNSでの「炎上」が、この判断に寄与したともいえよう。 

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2018年にイオン葛西店の売り場で販売されていたウナギ

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