急な会議や発表を任されて、プレゼンテーションのスライドや資料作りがおろそかになってしまった経験はないだろうか。どんなに優秀なビジネスパーソンでも、こうした作業はちょっと面倒で負担に感じるものだ。
慌てていつものテンプレートに原稿を入れて仕上げたものの「なんだか代わり映えしないなぁ」と思ったり、データやエビデンスをばっちりそろえても「このスライドでちゃんと内容を理解してもらえるか分からない……」と不安に感じたりする人も少なくないのではないだろうか。
例えばこのスライド資料。使用しているフォントがバラバラで、文字もぎゅっと詰まってしまっているため、少々読みにくい。
(※)この記事に登場する資料は全て筆者と編集部が作成した架空のものです。
ここからフォントとデザインを少し変えるだけで、こうなる。
中身は一切変わっていないのに、資料全体にまとまりが生まれ、読みやすくなったのが分かるだろうか。大きさやスタイルは多少調整しているが、変更したのはタイトルとグラフ内のフォントだけだ。
元のスライドではタイトルにメイリオUIが使われていたが、メイリオUIは横組みにしたとき、1行にたくさんの文字が入るよう、ひらがなやカタカナの文字幅が狭められている。そのため、今回のように文字数の多いタイトルに使うと「詰め込みすぎ」に見えてしまうこともある。一方、変更後のスライドにはビジネスシーンなどフォーマルな雰囲気にマッチし、文字の間に十分なゆとりのある游ゴシックを使用している。グラフ内のフォントも、同じフォントファミリー(※1)でそろえているため、スライド全体に統一感が生まれ、すっきりとした印象になる。
(※1)同じデザインコンセプトで、文字の太さ(ウエイト)などが異なるフォントのバリエーションを、まとめて「フォントファミリー」という
エビデンスもばっちりで、中身もしっかり作り込んだ資料であればなおさら、フォントやデザインを少し工夫するだけで、プレゼンテーションの効果をぐっとアップすることができるだろう。
しかし、忙しいビジネスパーソンがデザインにこだわってじっくりと取り組むのは難しい。そこでこの連載では、会議直前の5分ほどでできるフォント&デザインのコツを解説していく。少しの工夫を加えるだけで、資料はブラッシュアップできるのだ。
初回となる今回は、フォント選びのポイントを解説する。プロ用の高価なフォントを購入しなくても、オープンソースやOSバンドルのフォントをきちんと選ぶだけで、資料の見栄えや印象を変えることができる。
著者プロフィール:菊池美範(きくち よしのり)
デザイン、出版事業などを行う株式会社エイアールディー代表取締役。1980年代末からパーソナルコンピュータをデザインワークに取り入れ、1990年代〜現在までグラフィック、エディトリアルデザインの分野でフォントの適切な使い方にこだわったデザインワークを続ける。
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