トヨタとスズキ 資本提携の構図:池田直渡「週刊モータージャーナル」(5/5 ページ)
トヨタ自動車とスズキは資本提携を発表した。その背景として大きいのがインド。スズキのインド戦略を振り返るとともに、提携による効果はどこにあるのかを探る。そして、トヨタとスズキとの提携の本丸は、インドでの工場共同設立にあるのではないか。
資本の形
さて、提携の内容に再び戻る。今回の提携内容の中で特筆すべきことがひとつある。提携に際してトヨタがスズキの第三者割当により、発行済株式の4.94%(960億円)を取得したことは驚くに値しない。トヨタは今旺盛にさまざまなジャンルで資本提供を行っており、額こそ大きいものの、数あるうちの一つでしかない。しかし、今回スズキは市場買付によってトヨタの株式を480億円取得することになっている。
トヨタが提携に際して自社株式所有を認めたのは、マツダと提携した時に次いで、トヨタ史上2度目のことである。ちなみにマツダの時は、トヨタは自己株式を500億円割り当て、マツダは第三者割当増資を500億円割り当てて、相互に同額の株式の持ち合いを行った。
株式の相互保有は、相手に自社の議決権の一部を認めるもので、ただの約束と重みが違う。逆にいえばそれだけの重みのある提携内容を進めていくということだ。マツダの場合はアラバマ工場の共同設立がその中心にあった。
そこから想像すれば、やはりスズキとの提携の本丸も、インドでの工場共同設立にあるのではないか。マツダの時は提携と同時に発表された共同工場設立が、今回まだ発表されていないのはなぜかと思わないでもないが、それはリリースの末尾に置かれた一文がヒントになる。「これらの株式取得は、海外の競争当局の承認が得られ次第実施する予定です」。つまりインド当局の判断待ちということだろう。
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