2015年7月27日以前の記事
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“香港消滅”へカウントダウンも デモの裏に潜む「東洋の真珠」の地位失墜観光客激減、大富豪が“脱出”(2/3 ページ)

激しいデモと混乱が続く香港。その裏側は中国内での香港の経済的地位の失墜があった。大富豪らが“脱出”を図る動きも。

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習近平の「武力介入」案も

 こうした中で、北京の香港軽視が強まり、「一国二制度」「港人治港」「50年間不変」などの約束が中国政府によってなし崩し的に反故(ほご)にされ始める。胡錦濤政権末期の2011年ごろからで、中国政府は香港と大陸の都市を同一視し、小学校での「愛国主義教育」の推進を一方的に求め、香港政府は直ちに従う決定を下した。

 ところが、市民がこれに猛反発し、デモにはベビーカーを押す親たちも参加。香港政府は「愛国主義教育」導入計画を断念した。が、中国政府は逆に香港に対する統制を強化し、この動きは「中華民族の偉大なる復興」をスローガンとして掲げる習近平政権の下で一段と加速。北京の眼鏡にかなう者だけが長官になれる法的仕組みが作り上げられ、これが14年の普通選挙を求める学生らのデモ、いわゆる「雨傘運動」につながっていった。

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過熱化する香港デモ(9月、提供:ロイター)

 今回の香港市民のデモはその規模において「雨傘運動」を大きく上回り、危機感を抱いた中国の習政権は深セン市の競技場に数千人規模の武装警察部隊を待機させ、その鎮圧訓練の動画を中国版Twitter「微博(ウェイボー)」で拡散させた。香港のデモ参加者に対する心理的な威圧が目的だったようで、武装警察部隊はまだ香港に入ってきてはいない。

 中国では8月の初旬から中旬にかけて習近平国家主席(党総書記)ら党や政府の指導者、長老たちが河北省の海岸にある避暑地、北戴河に集まったという。毎年恒例のいわゆる「北戴河会議」で、一部香港メディアによると、19年は米国との貿易戦争と共に、香港問題が主要議題として取り上げられ、貿易戦争では「米国に屈しない」という基本姿勢が、香港問題では「中国人民解放軍を(香港に)派遣しない」との方針が承認されたという。

 10月1日に新中国建国70周年の祝賀行事を控えていることや直接介入による国際的な批判を恐れたためらしい。武装警察部隊の投入で天安門事件(1989年6月4日)のような流血の大惨事となれば、欧米諸国や日本などから再び経済制裁を受け、ただでさえ悪化してきている中国経済が大きく傷つき、台湾の独立運動に拍車を掛けることになりかねない。

 習主席は「持久戦」を選択したようだ。香港警察はこの方針に基づき、デモ隊との正面衝突を避け、デモの指導者らを個別に次々と拘束し、デモの勢いを削ごうとしているようにみえる。

 だが、中国が武装警察部隊の香港投入というオプションを捨てたわけではない。香港政府が市民の力で普通選挙の実施に追い込まれかねない状況に陥れば、香港のデモが中国本土に伝染し、中国の民主化運動に再び火がつく危険がある。その芽を摘(つ)むために習主席が強硬策に転じることもあり得ないわけではない。

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