ダメなカローラと良いカローラ:池田直渡「週刊モータージャーナル」(6/6 ページ)
旧型のカローラと、TNGAベースの新型カローラは月とすっぽんくらいに違う。2010年前後デビューのトヨタ車の出来はありていにいってひどい。新型カローラシリーズは、だいぶ素晴らしい。完璧とはいわないが相当に良い。先行して登場したカローラ・スポーツで感じた違和感はどのようになったのか。
ついでツーリングのHV。ワゴンが少なくなった今、これが出てきたのは朗報だろう。運転するとセダンよりやはり少しだけ後ろが重い感じがするが、どっしり感が好印象ともいえる。車両の性格を考えるとこれも良いバランスだ。荷室の使い勝手は普通。バッテリーがあるので荷室の床下収納は実質ないが、そのほかに特に欠点は見当たらない。
最後にハッチバックであるカローラ・スポーツのHVだ。筆者個人の好みとしてはこれが一番良かったが、昨今の世情では、Cセグメントのハッチバックはちょっと商品として角度が付きすぎており、多くの人にお勧めするものではない。が、自ら欲しいという人には唆(そそのか)したいくらいには良い。
さて、このクラスの話でいつも話題になるのはゴルフを超えたか超えないか。正直なところ、一長一短。シートや空間の作り方あたりではゴルフが上、ステアリングのもてなし感というか、切り足して行くときの機械としての操作感の上質な感じなどはカローラの方が高い。先入観を捨ててみれば、カローラの方がもてなし感は全体に高い。
車両価格を250万円もしくは、300万円のラインで切ってしまえば、それは言い換えればこのクラスを候補にする普通のユーザーの条件で見れば、エコ性能はカローラの圧勝だが、値段を気にしないなら向こうにはディーゼルもEVもある。
過去の実績に鑑みれば、製品の耐久性もトヨタが圧勝。昔は「壊れるのは嫌だけれど、かといって完動時にフィールが悪いクルマに乗る気にならない」ということもいえたのだが、今世代の出来だと、完動時のフィールはいい勝負なので、信頼性の高さはプラスになるだろう。
勝ったか負けたかは、買う人が何を大事にするかによるだろうが、少なくとも新世代カローラは世界のトップランクにいることは間違いない。
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