セブン「1000店閉店、移転」はドミナント戦略の限界か:スピン経済の歩き方(2/6 ページ)
セブン-イレブンが2019年下期以降、1000店舗を閉店・移転すると発表した。街中にコンビニがあふれているので、「そりゃあそうだろう。ちょっと減らしたほうがいいよ」と思われたもしれないが、筆者の窪田氏は違う見方をしている。それは……。
不幸な人たちを量産
ご存じのように、セブンをはじめとする日本のコンビニは「え? こんな近くにまたセブンできんの?」という感じで、同一商圏内をさながら陣取りゲームのように自社コンビニで塗りつぶす「ドミナント戦略」で成長を遂げてきた。
商圏内のシェアを獲得すれば、加盟店全体の売り上げもあがるのでオーナーはハッピー、高校生バイトやフリーターも徒歩圏内で働けるので従業員的にもハッピー、店舗が集中しているので物流も効率的にまわすことができるのでFC本部もハッピー、そして何よりも、24時間いつでもなんでも買えることで我々客側もハッピーということで、社会になくてはならないインフラとして定着したのである。
が、このビジネスモデルが高度経済成長期につくられたことからも分かるように、これらのハッピーはすべて「人口が増え続ける」ことが前提となっている。ひとたび社会が人口減少へ転じれば当然、ガラガラと音を立てて壊れて、不幸な人たちを量産していくのだ。
まず、客が減るので競合だけではなくセブン同士で壮絶なカニバリが始まる。労働人口が減れば、低賃金・重労働バイトから敬遠されていくのでバイトの確保も難しくなる。コンビニ経営でウハウハです、という営業トークで私財を投じたオーナーが、自ら不眠不休でコンビニに立ち続けるという地獄の日々が始まる。
一方で、ロイヤルティービジネスをするFC本部としてはどうにか売り上げを維持させるために、カフェだ、イートインだ、と商品やサービスを充実させていく。結果、20年前はレジ打ちと棚卸しがメインだったコンビニバイトの仕事量が爆発的に増えて、最低賃金スレスレにもかかわらず1人何役も立ち回らなくてはいけない。つまり、典型的なブラックバイトになっていくのだ。
このあたりは、24時間営業問題のときにさんざん報じられたので今さら説明の必要はないだろうが、数字にも顕著に現れてきている。
セブン&アイ・ホールディングスの20年2月期第一四半期決算説明資料(7月14日)の「既存店売上・客数前年比推移」を見ると、客数は直近24カ月のうちなんと20カ月が前年割れしている。
どんなに高付加価値だなんだとふれ回ったところで、客の減った小売はじわじわとダメージを負う。コンビニ3社の中でも、19年3〜8月期の既存店売上高はローソンが前年同期比0.4%増、ファミリーマートは同0.9%増でプラスに踏ん張っているところ、セブンのみは同0.6%減。7月のチェーン全店売上高は前年同月比1.2%減と9年4カ月ぶりに前年を下回っている。
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