苦戦している日高屋への“刺客”!? 増殖を続ける「中華食堂 一番館」の実力に迫る:長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/6 ページ)
新興中華チェーン「中華食堂 一番館」が店舗数を増やしている。商圏が最近苦戦している日高屋と重なる場所もある。デフレ時代に対応するビジネスモデルとは?
近年、東京都内を中心に店舗数を伸ばしているのが、「中華食堂 一番館」である。首都圏と長野県に33店をチェーン店展開している。そのうち東京都内に26店が集中している。
このチェーンの特徴は、とにかく安いことだ。首都圏の激安中華チェーンというと「熱烈中華食堂 日高屋」が有名だが、その日高屋よりもさらに安い。
安いのは、まずお酒だ。酎ハイとハイボールの中ジョッキは100円(税込、以下同)である。第三のビール「クリアアサヒ」の中ジョッキが200円、生ビール「アサヒ スーパードライ」は300円などとなっており、ちょい飲みはもちろん、1000円で心ゆくまで酔える“センベロ”が可能である(店舗によって価格が違うことがある)。だから、特に夜はアルコール比率が高く、ほとんどのお客が飲んでいる店も多い。
主なメニューは、「炒飯」(350円)、「かけらぁ麺」(290円)、「焼き餃子」(6個で200円、4個では150円)などとなっている。
例えば、ギョーザを軽くつまみながら、酎ハイを8杯飲んでも1000円である。
ちなみに、ちょい飲みに力を入れている日高屋は、価格の基準として、ギョーザをつまみながらビールを飲み、ラーメンで締めて1000円以内になるようにしている。実際、生ビールの「キリン一番搾り」(290円)、「餃子」(6個で230円)、「中華そば」(390円)で910円となる。ギョーザは3個なら130円、チャーハンは460円だ。また、ハイボールやレモンサワーは290円となっている。
従って、生ビールなどを除くと、一番館のほうが基本的に安価に設定されているといえるだろう。
今回は、“ニュー中華ファストフード”の確立を目標とする一番館を研究してみたい。
日高屋と重なる立地
一番館の立地は総じて乗降客数が多い駅前が選ばれている。駅前ラーメン屋台の代用・店舗化をコンセプトとした日高屋をベンチマークしているともいえる。もしくは、“刺客”と呼んだほうがいいのかもしれない。
実際、日高屋が撤退した跡地に一番館がテナントとして入居することがしばしばある。2018年1月オープンの浅草ROX前店(東京都台東区)、同年6月オープンの六本木店(東京都港区)、そして19年6月にオープンした東武東上線の志木駅前店(埼玉県新座市)は「焼鳥日高」という日高屋が開発した焼鳥業態の跡に入った。
日高屋の運営会社であるハイデイ日高の既存店売上高は、18年11月〜19年8月まで10カ月も連続で前年同月比減となっている。19年の5月、7月、8月は、全店売上高も前年同月比減という状況だ。ハイデイ日高では「働き方改革の影響」が主たる原因で、夜に飲む人や食事をする人自体が減っているとしている。しかし、前期まで16年も連続で増収増益という非常に強い業態で起きている異変なので、それだけで売り上げが落ちるとも思えない。日高屋が午前2時まで営業しているすぐ近くで、一番館も午前2時まで開いているケースも多いのである。
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