「台風19号でもトラックの中止連絡無かった」――走り続けた零細物流が陥る“負の業界構造”とは:下請け構造、給与に根深い問題(1/5 ページ)
台風19号では多くの業界がサービスや営業を停止した。しかし筆者は「中小運輸では走っていたトラックも少なくない」と指摘。運輸業界特有の構造的問題に迫る。
9月上旬、関東地方に甚大な被害をもたらした台風15号。その対策に民間・行政の油断があったことは、誰もが認めるところだろう。
その際の教訓が生かされ、約1カ月後にやってきた台風19号では、上陸がほぼ確実になった地域を中心に、早いうちから防災グッズや非常食が売れた。また、鉄道や小売りなど多くの業界では、事前の臨時休業や営業時間の短縮、計画運休を決定。24時間営業をうたうコンビニまでもが、多くの店舗でその明かりを消した。
そんな中、物流業界でも佐川急便やヤマト運輸などの大手が、台風が通過する地域の一部で、集荷・配送に関する業務の停止や遅延を発表。各大手メーカーの自社便でも、商品の配送を早々に取りやめる動きがみられた。
これにより、世間に「物流までもが止まった」という雰囲気すら漂った台風19号だったが、その一方で、実は「あの日、暴風雨の中を走っていた」とするトラックドライバーが少なくないことが、ドライバーへの現場取材で分かってきた。
災害時にこそ、その存在の大きさを痛感する物流。だが、こうしてモノを運ぶトラックドライバーにも、身の安全を確保する権利がある。世間が気付かぬところで繰り広げられる「安全」と「仕事」の駆け引き。台風で見えた物流業界の構造問題に迫る。
小売りや交通機関、相次ぎ休止
今回の台風19号で、早々に臨時休業や営業時間の短縮を発表したのは、コンビニやスーパーなどの小売業から、鉄道や空の便、各高速道路などの公共交通機関、東京ディズニーランドやユニバーサル・スタジオ・ジャパンなどのアミューズメント施設と多業種に渡る。
こうして、過去にないほど多くの企業や機関が事前に休業を決定した背景には、19号が上陸前から「猛烈な勢力」と繰り返し報じられていたことに加え、想像をはるかに超えた被害や混乱をもたらした台風15号を、各社が教訓として捉えていた点があるからだろう。
顧客はもちろん、自社で働く従業員の安全にも配慮した形となった今回の各社の臨時休業に、国内全体の企業倫理の向上を感じた人も多いはずだ。
また、今回の災害が突発的な地震ではなく、進路をある程度見守ることのできる台風だったこと、そして上陸が土曜日だったことで事前調整と自宅待機ができたことも、混乱を最小限に抑えられた要因となったと言えるだろう。
関連記事
- 京急踏切事故で垣間見えたトラックドライバー業界の「構造的な闇」とは
電車の乗客ら35人が負傷、トラック運転手1人が死亡した京急踏切事故。その背景に筆者が垣間見たのは極端に高齢化が進むトラック業界の闇だった。データや現場取材、自身のドライバー経験を踏まえ迫る。 - ホリエモン「お前が終わっている」発言に見る、日本経済が「本当に終わっている」理由
ネット上の「日本終わっている」にホリエモンが「お前が終わっている」と反論、発言は賛否を呼んでいる。筆者はここに、日本の賃金水準がもたらす本質的な問題を見いだす。 - 北海道地震でデマ拡散が止まらない真のメカニズム
北海道地震で断水や携帯電話の不通といったデマがSNS上で流れている。被災時は心理的にデマを信じやすい上、lineでの友人間のやりとりで尾ひれが付きTwitterで拡散されるようだ。 - 「不景気だとカラムーチョが売れる!?」――知られざるナゾの法則に迫る
湖池屋の独自データで、不景気時にカラムーチョが売れる傾向にあることが判明。消費のメカニズムか単なる偶然か、追った。 - 中国人の間で日本の「のり弁」が話題沸騰 SNS分析でその「意外な真相」を追う
中国人向けSNSで日本の「のり弁当」の投稿数が急増している。背景には日本人の知らない「不思議な事情」が。SNSと中国市場の分析から迫る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.