「台風19号でもトラックの中止連絡無かった」――走り続けた零細物流が陥る“負の業界構造”とは:下請け構造、給与に根深い問題(3/5 ページ)
台風19号では多くの業界がサービスや営業を停止した。しかし筆者は「中小運輸では走っていたトラックも少なくない」と指摘。運輸業界特有の構造的問題に迫る。
下請けの「傭車」にしわ寄せが……
各大手物流企業やメーカーが早々とサービスの一部休止や縮小を決めた一方で、台風の中、前出のように稼働を命じられたドライバーも少なくなかった中小零細企業のトラック。両者の処遇にこうした違う傾向が発生した背景には、物流業界特有の構造がある。
運送業者にとっての「客」とはいわずもがな「荷主」だ。だが、中小零細規模の運送業者の場合、仕事の依頼を受けるのは、荷主からよりも、むしろ大手運送業者や自社の商品を運ぶトラックを所持しているメーカー、自社のトラックに空きのない同業・同規模の運送会社からであることが非常に多い。
こうして下請けとして代走するトラックは、業界では「傭車(ようしゃ)」と呼ばれる。関西エリアで活動する中小運送業者で、長年運行管理(トラックドライバーの運行を決め指示を出す配車係)を担ってきた担当者に、昨今の運輸企業の業務のうち傭車(他社に下請けとして出している)の比率について聞いたところ、「大手は6割〜8割。中小企業でも大手荷主を抱えている元請けのような会社だと6割を超える」と答えた。この数字は、業界を長く取材してきた筆者にとっても、納得のいく比率だ。
この傭車は、大手をはじめとする元請けが、単に人手不足の際に走るだけでなく、自社便の運行時間の超過による労働法違反やコンプライアンス違反を未然に防ぐためにも多く利用されることがある。
そんな傭車に対する扱いは、今回の台風の中での出庫に限らず、これまでにも現場から過酷だとする声が上がっていた。
下請けの下請けになればなるほど運賃はダンピングされるため、高速道路を浮かせるべくトラックに一般道路を走らせたり、長時間労働・低賃金を強いたりする業者が増え、結果的に末端にいけばいくほどドライバーの労働環境は悪くなる。
中には「走れないならば他に頼む」と言われることを恐れ、次の仕事につなげるためならば仕方ないと、荒天や赤字を覚悟したうえで、自社トラックを出さざるを得ないケースもある。
運送業界の中小零細企業の中に、コンプライアンスや労働基準法が守れない会社が多いのは、こうした構造が関係していることが多いのだ。
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