トランプが「ファーウェイ禁輸緩和」に傾いた真相 中国との“チキンレース”の内幕:米中貿易戦争の真実(4/4 ページ)
6月の大阪G20サミットで行われた米中首脳会談。トランプは意外にも「ファーウェイ禁輸緩和」を発言した。裏側にある米中の熾烈な“チキンレース”の内幕を暴露する。
米関連企業の多くは対中制裁に反対
一方、6月17日から25日にかけて、「第4弾対中関税制裁」と「ファーウェイに対する禁輸制裁」に関する公聴会が米議会で開かれた。320社ほどの米関連企業が意見を発表しているが、そのほとんどは対中制裁に反対していた。
特にファーウェイに対する禁輸に関しては、公聴会で意見を表明する前から、アメリカのいくつかの関連企業が、実際にファーウェイに対する禁輸を破っている。というのもファーウェイに対する禁輸措置は、米企業の製品や技術が25%以上含まれている場合は、どの国における製品でもファーウェイに出荷することができない。だが逆に言えば、その部品や技術が「米企業産の25%以下なら」、アメリカ以外の他の国に生産拠点を置いているアメリカ企業はファーウェイに輸出しても国内法を順守していることになる。
こういった法律の抜け穴を模索することに余念がない米企業には、半導体大手のマイクロン・テクノロジー、クァルコム、インテル、オン・セミコンダクターなど、枚挙にいとまがない。公聴会が進んでいる間にも、実際にファーウェイに対して一部出荷を再開し始めた企業が続出していた。
ファーウェイと取引をしている米企業はとてつもなく多い。そのサプライチェーンを切断されることは、米企業のビジネス生命にとって致命的であるというのが公聴会における主たる訴えだった。だからファーウェイに対する禁輸制裁を取り下げろと、圧倒的多数(中国メディアによれば98%)の米企業が主張したのである。
大統領選のために強気に出ていたトランプが、選挙に不利な結果をもたらす選択をすることはできない。公聴会における態勢不利をトランプが実感したタイミングを狙って、習近平は最後のダメ押しをしたのだという。
ということは、6月26日辺りにファーウェイへの禁輸解除の約束を最終的に取り付けたことになろうか。それを裏付ける類似の情報が、例えば6月27日のウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に載っている。題して、「ファーウェイ禁輸解除は貿易交渉の一部と中国が主張」。中国側は絶対にこのようなことは公表せず、秘密裏に動くので、私同様のインサイダー情報を、ホワイトハウスあるいはトランプ周辺から得る特別のルートを、WSJの誰かが持っているのかもしれない。
しかし、アメリカ国内ではG20大阪サミットにおけるトランプ発言に対する猛烈な反対が起き、政権与党でさえ早速意見表明をした。例えば6月30日、クドロー国家経済会議委員長はFOXニュースのインタビューで「ファーウェイはエンティティ・リストに残り、厳しい輸出管理が適用される」と断言している。
国家防衛法における制約や、エンティティ・リストに載っている政府見解を、トランプの一存で覆すわけにはいかないのは当然だろう。7月半ばに入ると、トランプは突然、前言を翻すようなことを言い始めた。従って大阪サミットにおけるトランプの言動は大統領選を意識した個人的な側面があったことを露呈しているが、その裏側には、複雑に絡み合った、動きが取れないような中国との関係、あるいはトランプ個人と米政府との思惑の乖離、そして米国防総省の5Gに関する決定的な報告書などが作用している。
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