キャッシュレス化で長財布はもうダサい!? ファッションプロデューサーMBが明かす「ファッションと時代」の意外な関係:MBが語るアパレルビジネスの近未来【後編】(4/4 ページ)
人気ファッションプロデューサーがいるMB(エムビー)への独占インタビュー後編は、ファッションビジネスの変遷や最前線について、思う存分語ってもらった。
スーツも初めはカジュアルなものだった
――日本の場合、クールビズなどをはじめとして、フォーマルとカジュアルのバランスも少しずつ変わってきていると言われています。
確かにフォーマルとカジュアルの境界線が少しずつなくなってきているのはあると思います。ビジネススーツを見ても、最近では肩パッドが入っていなくて、シワにならないカジュアルスーツみたいなものを着て出勤する人も増えてきましたし、街でそのスーツにTシャツとスニーカーを合わせる人も出てきています。
スーツそのものが仕事をするときに着るものっていう感覚が少しずつずれてきて、スーツ自体がカジュアルになってきている、というのはあると思います。
実は歴史をひも解くと、スーツってそもそもフォーマルだったりカジュアルだったりを繰り返して変化していっているものなんですよ。
例えば今われわれが着ているビジネススーツとかドレススーツって、数十年前はカジュアルなものだったんです。もともとは燕尾服やモーニングなど着丈の長いものがフォーマルなもので、短くしたものが今のスーツになるのです。
――今のスーツも、もともとはカジュアルなものだったのですね。なぜ着丈が短くなったのでしょうか。
今のジャケットの原型はスモーキングジャケットって言うんですけど、スモーキングっていうのはそのままタバコを吸うときのことを指しています。
スモーキングジャケットが流行った当時、タバコが大流行していました。最初は燕尾服とか長い着丈のものでタバコを吸っていたんですけど、タバコを吸うときって外で座るじゃないですか。着丈の長いまま座ると汚れたりシワになったりするから、それでタバコを吸うときには着丈が短いほうがいいんじゃないかということで、カジュアル化したのがスモーキングジャケット、すなわち今のスーツの原型なんです。
ただ、当時はスモーキングジャケットのような短い丈のジャケットを着るのはあくまでカジュアルで、フォーマルな場では礼を逸したファッションだったんです。
――それが今では立派なフォーマルなファッションとされています。
ドレスだったりカジュアルだったりの概念って、10年ぐらいだと変わりませんが、30〜40年ぐらいのスパンで見るとぐっと変わっていることもあります。何がフォーマルで何がカジュアルかというのは時代によって変化するものなので、もしかしたら今のスーツがこれからはカジュアルな服装というふうに変わるかもしれません。
もしそうなって、スーツは街でラフに着るもの、と認識されるようになると、今度はそれに代わるフォーマルな着こなしが出てきます。今のスーツが今後もっとカジュアルに認識される時代が来るのかもしれないと、今の流れだと僕は思いますね。
著者プロフィール
河嶌太郎(かわしま たろう)
1984年生まれ。千葉県市川市出身。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。アニメコンテンツなどを用いた地域振興事例の研究に携わる。近年は「週刊朝日」「AERA dot.」「DANRO」「Yahoo!ニュース個人」など雑誌・ウェブで執筆。ふるさと納税、アニメ、ゲーム、IT、鉄道など幅広いテーマを扱う。共著に『コンテンツツーリズム研究〔増補改訂版〕 アニメ・マンガ・ゲームと観光・文化・社会』(福村出版)など。
関連記事
- ユニクロが“1人勝ち”を続ける理由――そのヒントは「着物」にあった
近年は大量閉店や撤退が相次ぎ、苦境に立たされているアパレル業界の中で、過去最高益をたたき出し続け、“1人勝ち”を続けるユニクローー。「日本一ユニクロを買っているユニクロ研究家」を名乗る人気ファッションプロデューサーMBが、若者を中心に「おしゃれなもの」として定着したユニクロファッションの神髄を語る。 - ユニクロはいかにして中国で勝ったのか? 「20年の粘り腰」に見る強さの源泉
2002年秋、上海に初出店し、しばらく鳴かず飛ばずだったユニクローー。なぜ中国市場で勝つことができたのだろうか? 気鋭の論者が分析する。 - 低賃金が問題視されるアパレル業界 MBが見通す“分業化時代”に生き残るための働き方
低賃金が問題視されるアパレル業界――。人気ファッションプロデューサーMBが、分業化が進むアパレル業界で生き残っていくための「働き方」を語ってくれた。 - ひろゆきが斬る「ここがマズいよ働き方改革!」――「年収2000万円以下の会社員」が目指すべきこと
平成のネット史の最重要人物「ひろゆき」への独占インタビュー。ひろゆきの仕事観・仕事哲学を3回に分けて余すことなくお届けする。中編のテーマは「働き方」――。 - 午後7時閉店でも店長年収1000万円超え! 愛知県「地元密着スーパー」絶好調の秘密
愛知県東三河地方だけに5店舗しか展開していない「絶好調」のスーパーがある。「社員第一主義」を掲げ午後7時には閉店しているのに、店長の年収は1000万円を超える。その秘密に迫った。 - ホリエモンが社員を「切り捨て」てきた真意――サラリーマン社会も楽な方に変えられる
本当にそれは必要ですか? 経営者としての「ホリエモン流」人生哲学。ビジネスにまつわる「捨てる」ことの意義を、3回に分けて紹介していく。中編はホリエモンが社員を「切り捨て」てきた真意を語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.