調査会社の富士経済は11月29日、国内外食産業におけるデリバリーやテイクアウトの市場規模についてまとめた調査結果を発表した。デリバリー市場は2019年に2936億円(前年比4.9%増)に成長し、テイクアウト市場は6014億円(同3.6%増)まで拡大する見通し。「Uber Eats」や「出前館」といったデリバリー仲介サービス事業者の積極的な事業展開や、スマートフォンアプリの活用などが、需要拡大に影響しているという。
これまでデリバリー市場は、宅配ピザや宅配ずしといった宅配専門店が市場を引っ張ってきたが、近年はデリバリー仲介サービスが台頭。利便性の高さなどを売りに、首都圏を中心に利用を伸ばしている。今までデリバリーに着手していなかった企業がこうした仲介サービスを使ってデリバリーを展開し始めたこともあり、市場は拡大に転じたという。
一方、テイクアウトはハンバーガーや、チキン、牛丼などのファストフードが市場の8割近くを占めており、14年や15年はハンバーガーの苦戦によって市場は低調。しかし、16年にはハンバーガーが復調し、牛丼や回転寿司も成長を見せた。17年以降は、インターネットやスマホアプリを活用した予約システムを導入するチェーンが増え、消費者の利便性を高めたことで、市場が拡大し続けているという。「軽減税率の適応により割安なイメージが持たれていることも、利用増加の追い風になると見られる」(富士経済)
そんな中、富士経済は外食の注目市場として「牛丼」と「ラーメン」を挙げる。
牛丼の市場規模は、デリバリーが38億円(前年比31%増)、テイクアウトが727億円(前年比2.4%増)といずれも好調。デリバリーは「吉野家」や「松屋」といった大手チェーンが17年から提供を開始し、18年に大幅に対応店舗を拡大したことで市場を拡大。19年には他チェーンもUber Eatsなどを利用してサービスを展開しており、テイクアウトも「テイクアウト限定値下げ」のようなプロモーションや、キャッシュレス決済などが利用を後押ししているという。
一方ラーメン市場は、18年にはわずかだったデリバリーが4億円に成長。大手チェーンの「日高屋」や「幸楽苑」が出前館を利用してデリバリーを開始するなど、本格的にデリバリーに乗り出しており、今後も市場は拡大すると見られる。テイクアウトも52億円と前年比4%増。富士経済は「餃子やからあげなどのサイドメニューが中心であるが、一定規模の需要があり、今後も堅調な拡大が予想される」としている。
調査は19年7〜9月に、富士経済の専門調査員が実施。参入企業や関連企業、団体などへのヒアリングや関連文献調査を行い、同社の社内データーベースも活用した。調査対象はハンバーガーなどのファストフード、ファミリーレストラン、西洋料理などの専門店、宅配ピザなどの宅配専門店など、32業態。
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