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高橋名人の働き方 「ゲームは1日1時間」はテレビゲームを“インベーダーハウス化”させない戦略だった高橋名人の仕事哲学【後編】(4/5 ページ)

かつて「ファミコン小僧」と呼ばれた子どもたちにはヒーローがいた。高橋名人(60)だ。子どもたちの前では「名人」として全国各地を渡り歩き、テレビゲームの普及活動に務めた。大人の顔としてはハドソンの宣伝マンとしてテレビゲームの普及活動に努め、ゲーム史に残る数々の偉業を残している。だが、実はそんな名人も元は口下手であったといい、その素顔についてはあまり知られていない。「名人」本人が自身の仕事哲学について語った。

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「ファミコンで遊ぶな」とは言えない

――とはいえ、単刀直入に子どもに「勉強しろ」とも言えないですよね。

 私もそうでしたけど、ただ「勉強しろ」と言われて勉強する子どもは少ないと思います。とはいえ、「ファミコンで遊ぶな」とは言えないですし、「時間を制限して遊びなさい」って私が言っても守らないだろうなと思いました。

 そこで最初に出てきた言葉が「ゲームをうまくなりたいんだったら、1時間集中して遊びなさい」というものだったんです。だらだらとプレイして失敗したところが記憶に残っても絶対うまくならないんだと。上手にプレイできる1時間だけを本当に集中してやることで、みんなどんどんうまくなるんだよっていう言い方をしたわけです。

――ただ、会社としては売り物を自ら抑制する話になってしまいますよね。

 もちろん、会社的にはまさかこんな言葉が出るとは思っていなかったと思います。どんどん遊んでもらうために宣伝活動をするわけですから。私が初めてこの言葉を言ったのは、ステージに手応えを感じ始めた熊本大会から数日後になる、85年7月26日の福岡県のダイエー香椎店(当時)でのことでした。

 他の小店舗の会場だと大会に参加する子どもだけという場合も少なくなかったのですが、この会場は広い地域から子どもが親と車で来るような大規模店でした。だから会場には親御さんも多く来ていて、「何か言わなければいけない」と思ってしまったんです。親御さんからの反応は悪くなかったのですが、大きい会場だったたので、そこに問屋さんの人もいたわけです。すぐに「お前のメーカーの社員が『遊ぶな』みたいなことを言っている」という問い合わせが営業にいきました。

 そのままハドソンの上層部に伝わり、「高橋が変なことを言っている」と、翌日には役員会議が開かれたのです。

――最終的にはそこから「ゲームは1日1時間」という言葉が生まれたわけですね。

 その役員会で社長や副社長が、将来のことを考えたら健全な方向に持っていくほうが正しいという結論になりました。「メーカーとして後押しするから、標語としていい言葉を作れ」と言われましたね。それで「ゲームは1日1時間」という言葉が生まれたわけです。ただ、子どもたちからの反発はすごかったですね。一番多かったのは「1時間ではクリアできない」というものでした。

――ゲームというものを健全なイメージにさせ、世の中に定着させていこうという狙いが見て取れます。

 やはりテレビゲームは新しい遊びだったので、この遊びを大きくしていくためにはどうしたらいいか、将来ずっと面白いものにするためにはどうしたらいいか、飽きさせないためにはどうしたらいいか、ということをずっと考えていました。

phot

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