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断捨離で人はなぜ“人生リセット”したがるのか――「自己啓発と意識させない自己啓発」ブーム:日常に抵抗無く忍び込む“倫理”(4/4 ページ)
息の長いブームが続く断捨離、「片付ければ人生も変わる」という言説が多い。筆者はそこに巧妙な「自己啓発」のメソッドをみる。
いずれは「人生そのものの断捨離」も
「モノのアイデンティティー」と「自己への回帰」のアンサンブルが奏でる断捨離ビジネスは、衰えるどころかすでにわたしたちの日常にすっかり定着しつつあります。自己の内面に潜在している「指針」と、ナルシシズム的な欲望を隠した「快適さ」の需要に応えるバイブルとして流通しています。この傾向は強まりこそすれ弱まることはありません。
以上のような断捨離ビジネスの展望については、今後「お片付け」の分野にとどまるということはなく、より全面的な断捨離化が進む可能性が高いといえます。
まさに「人生の断捨離」です。
血縁関係の断捨離としての絶縁、消費生活の断捨離としてのミニマムライフ、終末医療の断捨離としての安楽死など、ありとあらゆる人生のステージを総合する断捨離メソッドが開発されれば大変な訴求力を持つと思われます。
それが21世紀の養生訓となるか、あるいは葉隠となるか、肝心のダンシャリアンですら驚愕の未来が待っているかもしれません。
真鍋厚(まなべ あつし/評論家)
1979年、奈良県天理市生まれ。大阪芸術大学大学院芸術制作研究科修士課程修了。出版社に勤める傍ら評論活動を展開。専門分野はテロリズム、ネット炎上、コミュニティーなど。著書に『テロリスト・ワールド』(現代書館)、『不寛容という不安』(彩流社)がある。
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