大戸屋ドキュメントに見る、改善努力がパワハラ呼ばわりされる理由(3/3 ページ)
定食屋チェーン「大戸屋」が揺れている。テレビ東京の『ガイアの夜明け』で社長の発言がパワハラ呼ばわりされ、ネット上で批判が起きているのだ。
(3)ハラスメントと受け止められる理由
大戸屋社長はじめ経営陣の方は、むしろ残業時間削減のような良い方向を目指して努力されているのだと感じます。ただ、それが視聴者に伝わったかどうか、さらには私が警告を発している「ネットの向こうを警戒せよ」という危機管理コミニュケ―ションが果たせているか、大いに疑問を持ちました。実際ネットニュースで伝えられたこの番組には多くの批判が集まり炎上状態になり、大戸屋から釈明アナウンスすら発せられるほどの事態となりました。番組を見ずにネットニュースだけを見ての批判が膨らんでいったのです。これが想定すべきだった「ネットの向こう側」の反応です。
このように元から悪意をもっていじめたり暴力・暴言をふるう以上に、「善意」がハラスメントと受け止められることが少なくないのです。今経営者となっている成功した方々は、恐らく昭和の時代は普通に行われていたハラスメントや過酷な労働環境、具体的な指示もない中、根性で改善するという体質でも成功できた方でしょう。しかし組織はすべてが成功者だけで構成されているのではありません。
高い能力を持ったスタッフだけで構成される組織はありません。そうでないスタッフに、根性論をふりかざし「自分はこんなに辛かった・努力した」と言っても、それは何も改善にはつながりません。経営陣が関与すべきは努力や根性ではなく、地域の時給状況やバイト募集支援、店舗間でのオペレーション統合などシステム化による効率向上です。個店店長にその責任をかぶせているように伝わったことが、今回の炎上の理由だと思います。
居酒屋甲子園のような、努力や根性、キラキラした自分への成長を礼賛する行為は「やりがい搾取」と批判されます。人手不足なのではなく、それではオペレーションが回らない程度の時給、従来のような個人の努力ではまかないきれない原価(人件費)を売価に反映できない経営こそが問題なのです。死ぬほど働かされる外資戦略コンサルや金融はやりがい搾取と呼ばれません。なぜなら死ぬほどの激務に見合う給与を得ているからです。給与は最低レベル、業務は超絶というアンバランスが許されない環境での根性論・経験上成功談は、ハラスメントとなり得ると考えるべきなのです。(増沢隆太)
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