「責任と権限の委譲」問題、どのようにすれば解決するのか:ケースで学ぶ(2/5 ページ)
「責任と権限の委譲」がうまく行かないことに、課題を感じている組織も多いのでは。こうした問題に対して、どのように向き合えばいいのか。組織が成長するためには……。
変革前の藤堂システムズ
8年前に大手アパレルメーカー向けCXプラットフォームサービスをスピンアウトする形で創業した藤堂システムズ(仮名)。アパレル業界はEC化が遅れており、今後の伸びが期待される分野であったことに加え、元々大手アパレルメーカーと取引を持った状態でスタートしたため業績は順調に推移し、売り上げ30億円、社員数約40名の規模に成長した。IPOも視野に入れていたが、競合も増えてきておりサービスが乱立、CX(顧客体験)プラットフォームだけでは新規顧客の獲得が難しい状況にもなってきていた。
そこで、新たに顧客接点の全てを一元管理できるサービスを開発し、アパレル業界以外への展開も視野に入れさらなる拡大を目指すことにした。新サービスは競合も多くスピーディな拡販と機能拡大が必要とされ、既存サービスとは動き方が変わるため、事業部制を導入しサービスごとに戦略を立てられる体制をとった。それに伴い、経営企画室長だった遠藤(仮名)を新サービス事業部の部長にし、既存事業部には外部から新たに部長を採用した。
しかし、新たな体制は順調には進まなかった。新規事業部門を任された遠藤は、社長に対して不満を抱えていた。社長は「リーダーシップを発揮してほしい」というが、経営企画会議でたびたび事業プランを提案しても、毎回社長に否定され戦略が定まらない。そんな状況に遠藤は「事業部長という大きな責任を負わせられる一方で、十分な権限が与えられていない」と感じていたのだ。
加えて元部下からは、「新しく来た部長は優秀なのは分かるが、前職ではこうだった、これが正しいという持論を振りかざしてばかりで、現場は結構不満を募らせえている」と聞かされ、「遠藤さんにうまく取り持ってほしい」と相談されていた。
事業の方向性が決まらないことで、明確な目標設定ができないまま走っている中、既存のやり方を否定する新部長への批判の声も相まって、新体制に批判的な社員も目立つようになってきた。
関連記事
- 「韓国人観光客激減」は長い目で見れば、日本のためになる理由
日韓の政治バトルによる「嫌日」の高まりから、韓国人観光客が激減している。このような事態を受け、一部の観光地から「早く仲直りしてくれないと困る」といった悲鳴が上がっているが、筆者の窪田氏はどのように見ているのか。長い目で見れば……。 - チキンサンドに何が起きているのか 全米で人気爆発の背景
米国のファストフードで、チキンサンドが盛り上がっている。話題の商品を手に入れるために、長蛇の列ができることも珍しくないが、そもそもなぜチキンサンドが売れているのか。以前からあったメニューなのに……。 - 「残業が多い・少ない職種」ランキング、1位はちょっと意外な結果に
dodaが「職種別の残業時間ランキング」を発表。残業が多い・少ない双方でちょっと意外な職種がランクインした。全体的に営業は残業長め、逆に事務系は短い傾向も。 - 「日本経済が成長しないのは、中小企業が多いから」は本当か
少子化に歯止めがかからない。出生数は90万人割れが確実となっていて、これは推計よりも早いペースだという。このままだと日本経済がさらに悪くなりそうだが、“治療法”はあるのだろうか。筆者の窪田氏は「中小企業改革」を挙げていて……。 - 7割が「課長」になれない中で、5年後も食っていける人物
「いまの時代、7割は課長になれない」と言われているが、ビジネスパーソンはどのように対応すればいいのか。リクルートでフェローを務められ、その後、中学校の校長を務められた藤原和博さんに聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.