日本郵政の元凶は「多すぎる郵便局」と考える、これだけの理由:スピン経済の歩き方(6/6 ページ)
かんぽ生命の営業現場が、大変な騒ぎになっている。高齢者をだまし、契約を結ぶ。その一線を超えられない人に対して、「お前は寄生虫」などと罵声を浴びせる。典型的なブラック企業なわけだが、なぜこのような組織になってしまったのか。
日本郵政は、この国の縮図
万国郵便連合(UPU)が各国の郵便サービス全般を数値化した指標がある。1位はスイス、2位はオランダで、日本は3位だった。その理由が先に、「諸外国の郵便サービス」の中で以下のように誇らしげに紹介されていた。
- 郵便サービス品質が高く、他国に優れている
- ゆうちょ、かんぽのサービスも提供することで、国民の多様なニーズに応じている。
最近やたらとこういう話が多くないか。世界一の技術だとうたっていたら、実はデータ改ざんしていましたとか、世界一品質が高い、ニーズが山ほどあると宣伝していた企業、裏でインチキや粉飾していたとか。このような外見を取り繕って、実は裏では「数の帳尻合わせ」に邁進している巨大組織が、今の日本でボロボロ出てきている現実を受け入れて、その原因をもっと真剣に考えていくべきだ。
子どもがどんどん生まれる人口増時代につくったインフラやサービスを、高齢者があふれるこの世界で維持することが、本当に社会にとって幸せの道なのか。どこかで理想と現実の折り合いをつけるべきではないのか。
このあたりの問いかけは、高齢者の「チケット」でメシを食う旧来の政治家からは、いつまで待っても出てこない。ということは、我々社会の方からの動かしていくしかないのだ。
不可能な目標を掲げるあまりパワハラと不正が横行して、新しいリーダーが必要だとトップが代わってもまたしばらくしたら同じような過ちを繰り返す。日本郵政は、この国の縮図のようだと感じるのは、筆者だけだろうか。
窪田順生氏のプロフィール:
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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