ケンタッキー全国一食べる沖縄県民、でも鶏肉消費量は44位のワケ(4/4 ページ)
ケンタッキーフライドチキンの1人当たりの消費量をみると、全国トップは沖縄県だ。コンビニやスーパーなどが“チキン戦争“に参入し、しのぎを削っているが、那覇市の一世帯の鶏肉消費量は意外にも44位。なぜ……?
沖縄が消費量が少ない? 数字のワナ
赤嶺理事長は「正直、以前からこの数字を不思議だなと思っていた。体感的には鶏肉の消費はもっとあるのではないかと。何度か沖縄に流通する鶏肉の量を調べようと試みたが、正直なところ、復帰してからは難しいのが現状」
理論はこうだ。
復帰前は、税関を通る鶏の輸出入の動きは沖縄で把握でき、沖縄県内での生産量と合わせれば、消費量をはじきだせた。しかし、復帰後は、例えば大阪の税関を通った輸入鶏肉が沖縄に運ばれてきても、どれだけ入ってきたのか把握できない。
「推測だが、沖縄で流通している鶏肉は沖縄産が約40%、本土産が約10%、加工も含めた輸入品が約50%と見ている。輸入品は、どう流通しているのか分かっていない。対照的に国内産は、ある程度はっきりとしている。量販店が約65%、ファストフードが約25%、チキン丸焼きの専門店が10%ほどで、残りがホテルや給食で使われている」
鶏肉は家で調理しない?
一方で、総務省に問い合わせたところ、家計調査は、協力してくれた家庭の家計簿を元に算出しており、「鶏肉」の消費量は世帯で調理した量を指しているとのこと。
スーパーの総菜やコンビニ、ファストフードなどで扱う「チキン」の消費量は調理食品の「天ぷら・フライ」や「弁当」に該当するようで、その項目はポテトフライやアメリカンドッグなども含まれた数字になるという。
結局、チキンのはっきりとした消費量は「実際には分からない」との回答だった。
ただ、那覇市は「天ぷら・フライ」の消費額を見ると、全国12位。「弁当」は全国一。沖縄県民は、鶏肉は家庭で調理するというよりも、調理されたチキンを消費する傾向が高いと言えるのかもしれない。
沖縄の“チキン天国”、まだまだ続きそうだ。
出典・参考文献一覧:
岩間範子(2018)「沖縄の食文化−過去,現在そして未来へ」,『女子栄養大学紀要』49号p.9-16
沖縄タイムス社(1983)『沖縄大百科事典』 沖縄タイムス社
沖縄タイムス「総菜チキン色トリどり」2018年06月30日付朝刊,1(9).
沖縄コンビニ三国志 2019年07月11日付朝刊,1(7).
金城須美子(1995)「沖縄の食にみる米国統治の影響(第一報):外資系洋風ファーストフード(米国型)の導入と受容」,『琉球大学教育学部紀要』第一部・第二部(47)p.173-180
金城須美子(1995)「沖縄の食にみる米国統治の影響 (第二報):沖縄県民の洋風ファーストフード利用の実態と意識調査」,『琉球大学教育学部紀要』第一部・第二部(47)p.181-189
菊地香(2016)「沖縄本島中部地域における伝統的な行事と食文化の継承性」,『農業および園芸』917号 p.718-728
総務省統計局「家計調査(二人以上の世帯)品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※)ランキング(2016年(平成28年)〜2018年(平成30年)平均)」, <http://www.stat.go.jp/data/kakei/5.html>
平井岳哉(2015)「日本ケンタッキー・フライド・チキンの成長と三菱商事」,『獨協経済』(97),p65-77
宮城吉通(1998)「沖縄県の畜産の現状」,『日本草地学会九州支部会報』28巻1号p.1-6
吉田茂(1978)「沖縄県の食肉消費構造の特質について」,『沖縄農業』14(2):p.39-42
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