「HAKOBIYA」のサービスに関わる法的問題やリスクをどう考えればいいのか:運営会社と関連省庁の見解は
「HAKOBIYA」のビジネスモデルに法的問題やリスクはあるのか。運営会社はどのように対策しているのか。関係省庁の見解も聞いた。
編集部からのお知らせ:
海外旅行のついでに“おつかい”で稼ごう 「HAKOBIYA」が日本での展開に本腰の記事公開後、「利用者が犯罪に巻き込まれるリスクがあるのではないか」「国によって持ち込みが禁止・規制されている商品の扱いはどうなっているのか」といったご指摘が読者からございました。そこで、運営会社や関係省庁の見解を本記事で紹介していきます。新たな情報が入った場合は、本記事に追記してまいります。
【2019年12月26日午前11時40分】
国土交通省の見解を追記しました。
ITmedia ビジネスオンラインは、ソーシャルショッピングアプリ「HAKOBIYA(ハコビヤ)」の運営会社である「PicUApp」(東京都北区)に対して、犯罪に巻き込まれたり、違法な物品を持ち込んだりといったリスクに対して、どのように対処しているのかを聞いた。
ユーザー間のやりとりを監視する仕組み
PicUAppはどのようにしてユーザー間のやりとりを監視しているのか。現在、HAKOBIYAのサービスが利用できるのは日本とベトナムだけになっている。日本とベトナムのユーザーはHAKOBIYAのアプリを通して、依頼内容や報酬金額について交渉する。
広報担当者によると、日本とベトナムの両国にカスタマーサポート(CS)担当者が存在しているという。CS担当者は依頼内容がアプリ上に投稿された段階からモニタリングを開始。全てのやりやりとりを目視でチェックしている。
HAKOBIYAの利用規約には、「依頼禁止物品」が定められている。例えば、「現金、小切手、手形、株券及びその他の有価証券類」「麻薬、向精神薬、大麻、あへん、けしがら、覚せい剤、あへん吸煙具」「爆発物」などだ。仮に、禁止された物品の依頼が投稿された場合、依頼の削除やユーザーの凍結処理などが行われるという。
また、取引や引き受けの手続きをアプリ上で進めていると、ユーザーが輸出入できない物品のリストを参照できるようにしているという。CS担当者のチェックは入るが、現段階では最終的にユーザーが確認し、対応するのが基本的なスタンスだ。輸出入できない物品のリストとは、日本の税関が海外旅行者向けに発行している「通関案内」だ。
犯罪に巻き込まれるリスクと対処
ユーザーが犯罪に巻き込まれるリスクについてPicUAppはどう考えているのか。例えば、輸入が禁止されている違法な物品を、ベトナムのユーザーAが日本のユーザーBに運ばせようとたくらんだとする。Aは日本の協力者と結託し、特定の店舗でしか販売していないぬいぐるみの中に物品を隠すことを思い付く。そんな事情を知らないBは、違法な物品の入ったぬいぐるみを自分で購入し、ベトナムに渡航する。ベトナムの税関で違法な物品が見つかってしまい、Bは現地の法律で罰せられるといったケースが考えられる。
PicUAppの広報担当者は、ユーザー間のやりとりをモニタリングしたり、輸出入できない物品があることをユーザーにアピールしたりすることで、そういった犯罪に巻き込まれるリスクは下げられるという認識を示した。ただ、そういった悪意のある行為を100%排除できるような仕組みにはなっていないことも認めた。HAKOBIYAでは、「依頼された商品をどこで購入するのか」という判断はユーザーに任されている。トラブルに巻き込まれないためには、ユーザーが最悪の事態を想定して、自衛する必要があるといえるだろう。東京税関の広報担当者も、たとえ第三者に購入を依頼されたものであっても、税関を通過する際は渡航者の持ち物と見なされると説明する。
今後の対策は
HAKOBIYAは2019年4月にサービスをローンチしたが、過去にトラブルは起きていないのだろうか。広報担当者は、過去に違法な物品購入依頼が投稿された例はなく、仮に違法な依頼があればすぐにはじくような仕組みになっているという。
PicUAppでは、今後、HAKOBIYAにおけるモニタリングの精度を上げたり、トラブルを防止するためにさまざまな取り組みをしていく予定だという。例えば、ベトナムと日本で異なる通関の仕組みについて解説したユーザーガイドのページを作成し、2020年1月をめどに公開するそうだ。内容は徐々にアップデートしていく。現在、ユーザーに参考資料として提供されている「通関案内」よりも詳しい内容になる予定だ。また、現段階ではユーザー間で取引が行われる前に、購入品の写真とレシートを確認するよう推奨しているが、20年5月をめどに必須の手続きにする予定だ。さらに、現在はアプリ上に購入依頼が投稿されてから24時間以内にCS担当者が確認するような体制にしているが、短時間の間に取引が完了してしまうようなケースを防ぐシステムも20年5〜6月をめどに導入するという。
ビジネスモデル自体に問題はないのか
HAKOBIYAのビジネスモデルを立ち上げる際、法的な問題点をどのようにして検証したのだろうか。広報担当者は「法的な問題はないという趣旨の意見書を弁護士から提出されている」と主張する。意見書の中身は非公開だが、関税関連と貨物利用運送事業に関する法律には抵触していないという。
ITmedia ビジネスオンライン編集部は、この点について確認するため財務省関税局に取材を申し込んだ。しかし、同省の広報担当者は「一企業のサービスに対してコメントはできない」と回答した。また、貨物利用運送事業法を所管する国土交通省にも取材を行い、回答があり次第追記する。
2019年12月26日追記
ITmedia ビジネスオンライン編集部は、国土交通省総合政策局物流政策課物流産業室の担当者に、HAKOBIYAのビジネスモデルが貨物利用運送事業法に抵触していないかどうかを聞いた。担当者は、渡航者が旅客として依頼された商品を運ぶのであれば、特別な登録・許可を受ける必要はないという見解を示した。
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