日本を混乱させた中国企業「500ドットコム」が、うさんくさく感じる3つの理由:スピン経済の歩き方(4/6 ページ)
共同通信が行った調査によると、IRの整備を「見直すべきだ」と回答した人がなんと70.6%にものぼったという。「カジノ汚職」を受けて、多くの国民はIRをうさんくさく感じているようだが、こうした動きの背景に何があるのか。筆者の窪田氏は、中国企業の存在を指摘していて……。
3回生議員にカネをバラまく動機
このような状況を見ていると、500ドットコムが日本のIRに本気で参入したがっていたとは到底思えないのである。
「いやいや、本気だったからなりふり構わず賄賂に走ったんだろ」と思うかもしれないが、最もうさんくさいのが、実はその賄賂だ。もし本気でIRを狙っていたらこんなやり方をするのは理屈に合わない。それが(3)の「カジノ管理委員会、自治体関係者ではなく国会議員を狙う」ことだ。
一部専門家から指摘されているが、日本のIRビジネスで権限を持つのは、ライセンスを付与するカジノ管理委員会と、IR業者を選定する自治体である。
実際、過去に発覚した海外のIR汚職でも、カジノ規制当局の人間を、IR企業が自身のホテルで高額な部屋をあてがったり、高級レストランで接待をするなんてパターンもあった。しかし、今回500ドットコムは、カジノ管理委員会でも自治体職員でもなく、国会議員をターゲットにした。しかも、IR界隈で知られた維新議員の息子にカネを運ばせた。さっさと捕まえてください、と言わんばかりの雑なやり方と言わざるを得ない。
政治家は選挙に落ちたら一般人だ。しかも菅義偉官房長官や二階俊博自民党幹事長など自治体首長もひれ伏す「大物」ならいざ知らず、秋元議員のような「3回生」程度の議員に、紙袋に入れてカネをバラまく動機がまったく分からない。
では、なぜ500ドットコムは参入できる見込みの薄い日本で、ライセンスや業者選定にそれほど影響を及ばさない国会議員に対して、これまた数百万という中途半端な額の賄賂を渡したのか。
国内の政治勢力のパワーバランスを分かっていなかった。あるいは、日本の政治家を下に見ていて、数百万くらい包めばなんでもやると思っていた。いろいろな意見があるだろうが、筆者はまったく別の可能性が頭に浮かんでいる。それは、一連のIR疑獄は、日本のIR誘致計画を頓挫させるための工作活動という可能性だ。
中国がわざわざ日本のカジノを潰さなくちゃいけない理由などないだろと思うかもしれないが、実はないこともない。それは「マカオの平和」のためである。
19年12月20日、マカオで中国返還20周年の記念式典が催されて、そこに出席した習近平国家主席はこんな風に述べている。
「一国二制度の成功という輝かしい一章を創り出した」
この言葉からも分かるように、中国にとってマカオは、中国共産党への反発を強めている”問題児”の香港と対照的に、一国二制度自体は正しいことを世界にアピールできる”優等生”なのだ。
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