ブラック企業、セクハラ、解雇、引きこもり……38歳女性に刻まれた「氷河期という呪い」:ロスジェネ女子の就職サバイバル(2/5 ページ)
国などによる支援が始まったロスジェネ。この世代が負った“傷”は、果たしてキャリアや金銭の損失だけか。ブラック企業勤務から一時は引きこもりになった女性の半生から追う。
過労とストレスで「けいれん発作」
「当時は、安く人を使うのが当たり前という空気が蔓延(まんえん)していたんです。家に帰る気力が無くて、PCの梱包用の“プチプチ”(いわゆる気泡緩衝材)にくるまって、会社でよく寝泊まりしていました。プチプチってあったかいんですよ」
入社から9カ月を過ぎた頃から体調がおかしくなった。電力会社のシステムの入れ替えという重大な仕事を佐藤さん1人の手に委ねられることになったからだ。長時間労働と仕事の重圧で、全身にけいれん発作が起きるようになった。
「明らかに過労とストレスですね。長時間労働もあって疲れ過ぎていたし、システムが止まったら大変なことになる、と思ったら精神的にやられてしまった。仕事の責任感が重すぎたんです」
心病み転職した先もブラック
佐藤さんは、心身を病み退職。その後転職活動をしたが、当然ながら大手に採用されることは無い。転職先の会社はソフトウェア開発会社だったが、前の会社と同じブラック企業だった。長時間労働は変わらず、会社のソファで寝泊まりする日々は変わらなかった。
しかし、佐藤さんもいつしか、そんな生活に適応しようと奮闘していた。寝る間も惜しんでシステム開発について必死に勉強したのだ。
「その会社で働くうちに、負けられない!と変なやる気を出してしまったんです。今思うと、ブラックな環境での努力は一番無駄だし、良くない。頑張ることでかろうじてプライドを保っていたのかもしれません」
しかし、働き始めて2年が経った頃、業務内容が大きく方向転換し、佐藤さんのこれまでの仕事は外注されることになり、リストラの対象となる。
「労基がどうこうと言われますが、零細企業だと人って簡単に辞めさせられると思ってるんですよ。『仕事をあげたいけどうちは小さい会社だからもう無理』と言われると、居づらい空気になって、辞めざるをえなくなるんです」
婚活では「男性」が女性の収入値踏み
20代半ばになると、周囲は寿退社した同級生もいるし、親も「仕事がうまくいかないならお見合いでもしろ」と言う。佐藤さんは婚活もしていたが、同世代の男子もロスジェネなので、相手の収入やキャリアには敏感に反応してくる。
「同世代の男性も金銭的には苦しかったと思います。合コンでも大手に勤める女の子には男性はすごく反応するけど、私みたいな零細企業だと名前を言っても「何それ?聞いたことない」みたいな反応でした。お相手の男性に露骨に親の資産を聞かれたこともある。キャリアも収入面でも、給料も恥ずかしくて言えない額だったので、婚活も八方ふさがりになってしまいました」
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