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そもそも入港拒否はできたのか ダイヤモンド・プリンセスを巡る「法的根拠」の話:クルーズ市場最前線(3/3 ページ)
「客船を日本の港で受け入れるべきだったのか」「客船に上船する外国人船客と乗員の対応は日本がしなければならないのか」などさまざまな議論がなされていますが、少し立ち止まって考えてみましょう。
ダイヤモンド・プリンセスへの対策は法的に適切だったのか
まず、2月5日以降、長期にわたって実施している検査と船客乗員の船室隔離は、検疫法に則した対策で、これは(陸側に船客乗員を収容できる施設がないこともあって)法的には問題はないと考えられます。
一方、入港拒否の法的根拠においては、明確にそれを認める法令はないといえるでしょう。「ウエステルダム」が日本への入港を希望した件では、西日本エリアの検疫港に入港させて検疫を実施するのが法的には妥当だったといえます。ただし、その場合でも感染者を収容する陸側の対応医療施設の確保は難しいでしょうし、健康観察の船客は船室に14日間停留することになります。
※なお、2月13日に日本の感染症専門医で神戸大学病院感染症内科教授の岩田健太郎氏がYouTubeで船内の感染症対策の実態についてレポートを発信しています。その内容とダイヤモンド・プリンセスの船室施設が健康観察のための隔離施設として有効であったかは、今後検証と検討が必要であります。
ただ、岩田氏のレポートは防疫手法の問題を警告しており、船内設備には言及がないことに留意したいところです。また、ダイヤモンド・プリンセスの扱いが検疫法第十五条にある「隔離用の特定感染症指定医療施設」に準する扱いなのか、検疫法第十六条にある「停留に用いる収容施設」「船舶の長の同意を得て船舶内に収容」に準ずる扱いなのかは考慮する必要があるでしょう。
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