2015年7月27日以前の記事
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新型肺炎が教える中国ビジネスのリスク 情報公開が遅れる中国との付き合い方新型肺炎が教える中国ビジネスのリスク(2)(2/5 ページ)

新型肺炎の感染拡大が連日のように報道されている。報道を見れば見るほど、私たち日本人は「中国リスク」を痛感させられているのではないだろうか。本連載では中国ビジネスについての歴史的な経緯をクローズアップ。中国となんらかの関わりを持つ人が事前に知っておくべき教養と、新型肺炎がもたらすリスクについて取り上げていく。第2回目は、情報公開の遅れを生みだす中国の体質を知り、日本が付き合っていく方法に言及する。

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「目先の利益」に執着する中国人 煮え湯を飲まされる日本人

 独裁国家の弊害はしばしばビジネスの世界に及ぶので、中国ビジネスに携わりたいと思う人は、このことを常に念頭に置いておかなければならない。

 中国では明(ミン)の時代以来、三国志の人気キャラクターである関羽(かんう)が商売の神様として信仰を集めている。現在でも中華街に関帝廟があるように、商売は信用が第一というので、誰よりも義を重んじた関羽が尊ばれたのだが、現代中国のビジネスマンは関羽よりも単刀直入に財神を拝む傾向が強い。信義は脇にやられ、目先の金儲(もう)けばかりに執着しがちなのだ。

 中国人が契約や約束を軽視するのも、信用第一の考えが欠如していることが挙げられる。水揚げ後すぐ冷凍した海産物を頼んだところ、エビもアサリも砂だらけで洗浄しないことには売り物にならず、日本企業が煮え湯を飲まされたという事例がある。

 納期の遅れ、連絡なしの変更、取り止め、サンプルとはまったく状態の異なる品物の納品……中国ビジネスに携わった人であれば、誰もが一度は経験しているはずである。これらは信用にかかる重大な問題であるにもかかわらず、中国側の窓口から「没辨法(メイバンファー)」(仕方がないの意)の一言で片付けられるのだから、なおさら始末が悪い。

 筆者自身も、現場を見せてくれるというから訪中したのに、桂林の羅漢果喉飴の工場では製造過程を、大連での水産加工場では海辺の生け簀(いけす)を見せてもらえなかった経験がある。いずれもはっきりとした理由の説明はなされず、謝罪の言葉さえなかった。

 窓口の人間もおそらく理由を教えてもらっておらず、問い返すことさえ許されないのかもしれないが、それならせめてダメと分かった時点で連絡してくれれば、訪中自体を取りやめることができた。筆者の経験はだいぶ前のことであり、近年はだいぶ改善されたと思いたいところだが、伝え聞く限りでは、多少ましになった程度のようである。

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三国志の人気キャラクター、「商売の神様」として信仰を集めている関羽(かんう)を祀る祠(ほこら)、関帝廟(写真提供:ゲッティイメージズ)

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