国交相発言はみっともない 新幹線の車椅子スペース、増やすための“一手”:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/5 ページ)
東海道新幹線の新型車両N700Sの車椅子スペースについて、不満を示した赤羽国交大臣。国交省の基準に従って作った設備に対して“物申す”パフォーマンスは勘弁してほしい。実際、同省では新幹線のバリアフリー対策の議論を深めているところだ。もっと便利にするためには……
1列車に2人しか乗れない、絶対数の少なさ
「ハード対策検討WG」においては、絶対数の少なさが問題だ。なんでもオリンピック・パラリンピックにかこつけるのはどうかと思うけれど、例えば車いすバスケットボール(参加できるよう祈ってます)のチームや車椅子利用者たちの応援団が閉会後に京都観光へ行きたいと思っても、車椅子で5人同時に乗れる新幹線車両はない。5人チームなら、2人と1人で分かれて3本の列車に分乗する必要があり、時間差が生じる。2人が乗れる場合も、車椅子スペースが離れているため孤立する。同じ景色を見て、同じ駅弁を食べて、という旅ができない。歩行できる人が当たり前に楽しむ旅ができない。これは気の毒すぎる。
かつて車椅子利用者はめったに外出せず、孤独だった。環境が整わず、そうせざるを得なかったと言うこともあるけれど、今は違う。車椅子利用者も活発に動くし、仲間とつながっている。
さらに、ストレッチャー式の大型車椅子は長さ120センチの制限のため利用できない。自由席、グリーン車も利用したい、などの要望がある。車椅子利用者の中には、車内では通常の座席に移乗できる人もいれば、車椅子から動けない人もいる。
これに対し、JRからの意見は「真摯に受け止め、ハード面において少しでも改善できるよう取り組みたい」と前向きだ。それはいまだ解決策を持たないということでもあるけれども、現状を見直すきっかけとなる。「車両の扉位置はホームドアの関係で変更できない」は、できないわけではなく、費用と運用の問題だ。ここは国費による支援か、現状を理解してもらうしかない。
JRからは「議論の結果が具体的なものになれば、移動等円滑化基準やバリアフリーガイドラインの改正についても検討いただきたい」という意見がある。民間企業だから、膨大な費用が発生する案件については「国の定め」というお墨付きがないと、株主や他の利用者に説明しにくいのだろう。
この会議はJRが現状を見直す良いきっかけになった。赤羽大臣はこうした会議を開催するなど良い仕事をしている。それなのに、現状と対策に向けた取り組みを知りつつ「2座席では足りない、Supremeではない」などと言う。「新幹線のバリアフリー対策検討会」で話し合っている最中に、どうしてこんな発言ができるのか。読者諸氏には、赤羽大臣の発言がきっかけでバリアフリー対策が進んだのではなく、そのずっと前から取り組みが始まっていたことを心に留めてほしい。
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