王者Netflixを倒すのは誰か?――動画配信各社の“戦国時代”、勝敗を徹底分析:ジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(4/5 ページ)
戦国時代を迎えている動画配信サービス。首位のNetflixは果たして勝ち残れるか? 映像ビジネス報道の第一人者が各サービスを徹底分析。
Amazonプライムの意外な弱点とは
Netflixと共に動画配信ビジネスで先行したAmazonプライム・ビデオは微妙な立場にある。日本でも米国でもシェアは高い。しかし、Netflix とAmazonのビジネスモデルは実は根本的に異なっている。
Amazonプライムのサービスは、ECサイトの優先配送などから構成され、動画配信はその1つに過ぎない。「動画配信単体での収益性を考える必要がないことがAmazonプライムの強みだ」との指摘もある。ショッピングに誘導する集客マシンとしての動画サービス、音楽サービスである。しかし現状で巨大過ぎる組織のためか、配信と物販の間の効果的な道筋はサイト内に築けていない。さらに今後は「付加サービスとの位置付け」が、Amazonプライムの弱みに転化する可能性がある。
例えば日本におけるAmazonプライムの年額4900円、場合によってはさらに割引が可能でECでのプライオリティサービスも付く。Amazonプライムの優位性は、この低価格戦略にある。それだけに大きな値上げは難しい。
一方でNetflixやディズニー、ワーナーのオリジナルコンテンツ制作競争は激化の一途をたどり、総予算は拡大を続ける。Amazonはこれに追随するのだろうか。あるいは追随する必要があるのだろうか。単なる「集客ツール」であれば、そこにかけられる費用には限界がある。
実際にアカデミー賞やエミー賞といった賞レースで旋風(せんぷう)を巻き起こす両社だが、2019年はAmazonに勢いがなく、Netflixと差がついた。要はオリジナルコンテンツにお金がかけられないのだ。しかしAmazonにとってこれは問題でない。Amazonの本業は商品販売と流通であるのだから、収益面で重荷であればいつでも止める決断ができるだろう。動画配信でディズニーやNetflixに勝つ必要はない。それは配信会社であると同時に製作スタジオをも目指すNetflixや、そもそも映像製作会社であるハリウッドメジャーとの差である。
結局、世界の映像配信プラットフォームは、近い将来はディズニーとHBO MAXという2つのハリウッド系と、Netflixとの三つ巴の戦いになる可能性が高いのではないだろうか。
中でもディズニーとワーナーは、それぞれ長い歴史で積み上げたコンテンツの数で圧倒的なアドバンテージがある。だからこそNetflixはいま他社以上に巨額のコストをかけて、驚くほどのスピードでオリジナルコンテンツを創り出している。ディズニー、ワーナーにないコンテンツ、ジャンルでの囲い込みも勝負の鍵になる。両社の手が薄く、ユーザー市場に厚みのあるアジアドラマ、インド映画、ドキュメンタリーなどがそれに当たる。
日本アニメもその1つだろう。ディズニーやピクサーのコンテンツが配信できなければ、スタジオジブリ、ポケットモンスター、さらに深夜アニメ系のヤングアダルト向け作品といったジャンルを積極的に選択することになる。
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