新型コロナ“緊急事態”下でも従業員を守り抜くために 知っておくべき各種支援制度:どうする「新型コロナ緊急事態」(3/5 ページ)
新型コロナで大きな影響を受ける企業活動。全国に「緊急事態宣言」が発出された今、従業員を守るために知っておくべき各種支援制度とは? 新田龍氏が解説する。
労災保険の休業補償給付も使える?
従業員が業務上のケガや病気で仕事ができず、賃金も得られなくなった場合、労災保険の「休業補償給付」を受けることができる。従前からある制度だが、いま一度内容を確認しておこう。まず、この給付を受けられるのは次の3条件を満たした場合だ。
(1)業務上の事由によるケガや病気で療養している
(2)その療養のために仕事ができない
(3)療養期間中、給与が支払われていない
この際、休業初日から3日目までは給付基礎日額(直前3カ月間、労働者に対して支払われた賃金総額を、日数で割った金額)の60%が会社から「休業補償」として支払われ、休業4日目から「休業補償給付」と「休業特別支給金」(合わせて給付基礎日額の80%)が支給される。給付対象は正社員のみならず、パート・アルバイトを含む「直接雇用されたすべての従業員」だ(直接雇用者が対象のため、派遣社員や請負契約で働く人は休業補償給付から除外される)。
本来、業務上のケガや疾病については「会社側が療養費を負担しなければならない」と労働基準法で定められているし、労災保険は強制加入になっている。しかし、悪質な会社では極力労災保険を使わせず、従業員個人の健康保険で治療させようと仕向けることがある。その理由は、労災保険を使うと支払う保険料が高くなってしまうため、それをケチっている場合と、この給付や支給金を受けるために労働基準監督署へ請求書を提出しなければならないため、その際に労務管理や労働条件など、会社にとって都合が悪い点を突っつかれたくない、といった意図があることが考えられる。かたくなに労災を使わせようとしない会社であれば、今後の身の振り方を考えておいてもいいかもしれない。
【参考】厚生労働省「休業(補償)給付 傷病(補償)年金の請求手続」
業務外の理由で、仕事ができなくなった場合
労災は「業務上の理由での療養」だが、同じ療養でも、仕事ができず、給与支払いもない状態で、その理由が「業務外」であるときに受け取れるのが「傷病手当金」だ。こちらは、
(1)業務外の事由によるケガや病気で療養している
(2)その療養のために仕事ができない
(3)連続する3日間を含み、4日以上仕事ができなかった
(4)4日目以降の期間中、給与が支払われていない
という4つの条件が全て当てはまる場合に支給される。労災の場合は休業初日から「休業補償」が支払われるが、傷病手当金の場合は休業連続3日目までは「待期期間」となり、4日目以降に仕事に就けない場合に支給となる。
なお、この待期期間は有給休暇でも問題ない。また受給金額は、「(支給開始日前の過去12カ月の各月の標準報酬月額を平均した額)÷30日×2/3」と複雑であるので、事前にどれくらいが支給されるか確認しておくとよいだろう。また労災の支給期間は「休業補償の支給要件に該当しなくなるまで」だが、傷病手当金は「支給開始日から最長1年6カ月」となっている。そして基本的に労災と傷病手当金は同時には支給されないことになっている。
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