新型コロナ“緊急事態”下でも従業員を守り抜くために 知っておくべき各種支援制度:どうする「新型コロナ緊急事態」(5/5 ページ)
新型コロナで大きな影響を受ける企業活動。全国に「緊急事態宣言」が発出された今、従業員を守るために知っておくべき各種支援制度とは? 新田龍氏が解説する。
「事業縮小の影響で給料が払えない」、そんなときは
新型コロナウイルス感染症の影響によって「客数が減った」「取引縮小で受注が激減した」「行政からの営業自粛要請に従って休業した」「自社社員がウイルス感染したことで事業所を閉鎖したり、風評被害でキャンセルが相次いだ」などの理由で、会社として給料の支払いが厳しくなったとしても、従業員を解雇することなく、一時的な休業や出向などで雇用を維持した場合、会社は「雇用調整助成金」を得ることができる。
対象は休業手当や、教育訓練を実施した場合の賃金相当額、出向させた場合の出向元負担額などだ。現行基準での助成率が「大企業で1/2、中小企業で2/3」のところ、今回の特例では「大企業で2/3、中小企業で4/5」、解雇を行わない場合は「大企業で3/4、中小企業で9/10」まで拡大されている。 さらに本原稿執筆時点においても特例基準はどんどん緩和されており、
- 申請書類の記載項目を半減(73項目→38項目)
- 申請から支給までの期間を1カ月に早める(現状2カ月)
- 休業実績記録記載基準も緩和
- 事業活動状況確認書は既存書類コピーで可能
- 証明書添付を省略
- 計画届は事後提出可能
- 研修実施の際の上乗せ支給額を増額(1日1人当たり1200円→大企業1800円、中小企業2400円)
などが打ち出されている(4月20日現在)。
しかも、これは国から恩恵的に支給されるものではなく、会社と従業員が日々拠出している雇用保険料が財源なのだ。新型コロナの影響で休業を余儀なくされている事態はいわば「保険事故」であり、助成金は「保険金」だと考えればよい。受給できるものは堂々と申請すれば良いのである。
「資金繰り」の支援も活用しよう
資金繰りの支援もさまざま打ち出されているが、そもそもどんなメニューが利用できるのか、自分の会社は当てはまるのかなど、よく分からない人も多いはずだ。取り急ぎ現時点では、経済産業省が公表している「資金繰り支援内容一覧」が網羅的なので、参考にしていただきたい。コロナの影響で売上減少幅がどれくらいかによって、使えるメニューを選択できる一覧表になっている。必要書類もWeb上で取得でき、申し込みも郵送対応できるところも多いので、早めの対応をお勧めする。
また、間もなく(4月最終週予定)詳細が確定し公表される「持続化給付金」もぜひ確認しておきたい。新型コロナの影響により、売り上げが前年同月比で50%以上減少している事業者を対象に、法人は最大で200万円、個人事業者は最大100万円の給付金が得られる制度だ。対象は中堅企業、中小企業、小規模事業者、フリーランスを含む個人事業者と広く、医療法人、農業法人、NPO法人、社会福祉法人など、会社以外の法人についても幅広く対象となっている(資本金10億円以上の大企業は除外)。
あくまで「2020年12月までの、売上が最も減収した月(50%以下)×12カ月」と「2019年の総収入の差」が給付金額であるから、200万円、100万円という数字は理論上の上限ではあるのだが、この4月をまるまる休業していた事業者であれば、ほぼ満額得ることができるはずだ。もちろん、この給付金と雇用調整助成金は別に支給されるので、利用できる制度は極限まで利用して、この苦境をなんとか乗り切りたいところである。
関連記事
- コロナ対策「マスク郵送」は本当に麻生財務大臣への利益供与なのか
「財務大臣」は、日本郵政の発行株数の63.29%を保有する大株主だ。「財務大臣」は、日本郵政だけでなく、日本電信電話(NTT)や日本たばこ産業(JT)の筆頭株主でもある。「財務大臣」がこれらの企業の筆頭株主になっている背景には何があるのだろうか。 - 新型コロナ対策で露呈 「社員から確実に見放される企業」とは?
各社で大きく分かれる新型コロナ対策。対処ができなければ「従業員に見放される」可能性も。危機にこそ組織の本質が問われる。 - 新型コロナ下、正社員と非正規の残酷な「テレワーク格差」明らかに
パーソル総研が全国のテレワーク状況を調査したところ、正社員と非正規で実施率に大きな差が出た。飲食・小売りに非正規が多い点などが背景にあるとみられる。 - 品薄のマスク、ここで買えます 「在庫あり」のお店だけ、1枚の値段が安い順に表示するWebサイトが登場
新型コロナウイルス感染拡大の影響で品薄状態が続くマスク。花粉症のシーズンにもなり、深刻さが深まる。そんな中、在庫と価格、1枚当たりの価格を検索できるサイトが登場した。その名も…… - コロナ禍を機に考える「定年後の自分」 62歳元部長が地域で悪態をつき孤立する現実
「朝、店頭に並べない現役世代を尻目にマスクを買いだめする老人」「本当は在庫を隠しているのだろうと店員に食い下がる高齢男性」「列に割り込み、注意した人に暴力を振るう70代男性」……。今回のコロナ禍では日本全体が緊張感につつまれるなか、一部の高齢者による地域社会でのモラルが皆無な行動に対し、「暴走老人」などといった批判が生まれ、新たな火種となりそうな状況です。医学博士が、50代のうちに「定年後の自分」に早く向き合う必要性を事例とともにお伝えします。今回は、定年後に地域や家庭で孤立を深めていった男性の事例です。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.