「この逆境で業界は大きく変わる」クルーズ代理店トップが挑む次の一手:クルーズ市場最前線(2/2 ページ)
新型コロナウイルスの影響でクルーズ業界は致命的な打撃を受けている。主だったクルーズ船社は2020年前期の航海を取りやめ、その再開のめどはたっていない。その現在と未来をクルーズプラネット代表取締役社長の小林敦氏に聞いた
── クルーズ各社から再開に向けた具体的なスケジュールの説明は?
小林 旅行会社から繰り返し問い合わせはしていますが、今のところ、現時点における公式発表以外の情報はありません。予約をしている方には、休止期間が終わったら再開する予定です、としか今のところは言えない状況です。ただ、当初発表内容からクルーズ休止期間が延び続けているので、例えば、5月末までクルーズ休止を決めている船社が確実に6月からクルーズを開始するかというと、それは現時点では分からない、というのが正直なところです。
── 寄港先の地域において、クルーズに対する見方が厳しくなっていると思われます。
小林 新型コロナウイルスの封じ込めができた段階で、寄港先の自治体などに説明をしていきたいと考えています。しかし、寄港先の地域住民全員が対象となるので、具体的にどのようにしたらいいのかはまだ結論が出ていません。ただ、先ほど述べたようなクルーズ船で実施する対策によって安全が担保できることを自治体などから周知する必要があると考えています。
1つ問題なのがカポタージュ(外国船籍の客船が日本発着クルーズを実施する場合、必ず1回は海外の港に寄港する制度)です。日本発着のクルーズ船を受け入れてくれる海外の港でも同様の説明が必要になるでしょう。しかし、それは難しいことでもあります。
いま、中国はクルーズを再開するための準備を進めていますが、やはり、中国国外で寄港する港を調整するのが難しくなっています。そこで、特例としてカポタージュ規制を条件付きで解除しようという動きがでています。日本発着クルーズでも同様の対策を強く求めていきたいです。
── いっそ、どこにも寄港しないクルーズというのは?
小林 コアなクルーズファンには受け入れてもらえますが、やはり、寄港先の体験もクルーズにとって重要な要素です。無寄港クルーズをビジネスとして実施できるほど日本のクルーズ市場は成熟していないと思います。
ただ、それらを含めて、今後の日本クルーズ市場における対策について国交省や官公庁から具体的な情報がまだ出てきていません。クルーズ業界全体としては、できるだけ早く対策を出してもらいたいという気持ちはあります。先ほど述べたクルーズ業界全体として安全対策に関する情報を発信するという活動にしても、国交省に実施してもらえると、とても助かります。
── 具体的な対策ではWHOや国際保健規則、各国(特に米国)CDCなどが策定するガイドラインが大きな影響すると思います。
小林 最新の情報としては、米国CDCがこの先100日間(4月13日現在)、米国におけるクルーズを中止するように勧告しています。このように、今発出されている情報はクルーズ業界にとって決して追い風ではないのですが、その情報と現在の状況を冷静に判断して、今後の打つ手を考えていくことが必要だと思っています。
── このような状況でクルーズプラネットのスタッフのモチベーションを維持できている理由は?
小林 お客さまとのコミュニケーションですね。リピーターのみなさんから参加できる可能性のあるクルーズについて問い合わせがあったり、新しいクルーズプランを紹介したり、といったコミュニケーションを通して、このような状況でもクルーズの需要があることにあらためて気付いて、スタッフは前向きな気持ちで仕事に取り組むことができています。
スタッフには、夜明けの来ない夜はないですから、来るべき反転速攻のときに備えて、クルーズに行きたくても行けず、今一番つらい思いをしているお客さまに寄り添い、そのお客さまが希望するクルーズを提案することを大事にするように話しています。
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