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DX最先端都市、神戸市の挑戦 戦略と泥臭さの融合が動かす「弾み車」IT活用で変化する自治体の今(3/3 ページ)

連載「IT活用で変化する自治体の今」の第2回では、スタートアップとの協働で地域課題の解決に取り組む神戸市の事例を取り上げる。

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弾み車を回すための、戦略と泥臭さ

 ノーコード、ローコードという新しい技術が登場しているものの、それは導入すれば自動的に業務が効率化する魔法のツールではない。内製による業務改善をカルチャーとして全庁に浸透させ、各部署が自律的に業務を改革していくような状況を創出するためには、神戸市のような戦略と泥臭い活動が必要だ。

 そのプロセスはあたかも、世界的に読まれるビジネス書「ビジョナリー・カンパニー」(ジム・コリンズ著)に示される、弾み車(はずみぐるま)の法則のように感じられる。重い車輪である弾み車(flywheel)を回転させるには大きな力が必要だが、一度回転が始まれば慣性の力も加わって回転速度がどんどん上がっていくというものだ。自治体のDXにおいても、パイロット・プロジェクトを通じて最初の一回転を実現し、庁内広報やコミュニティーの力を加えながら回転速度を上げて、全庁に広げていくことができるはずだ。

 内製文化が神戸市にもたらしているメリットはどのようなものか。象徴的な例を1つ紹介しよう。

 コロナウイルスの流行によって市民からの電話相談が大量に発生したことを受け、保健師職の職員が情報共有と集計のためのシステムを自ら作成。情報システム部門にシステム改善や具体的な運用の相談を求めてきたという。ローコード開発ツールの自分たちでいつでも改修ができる特性を生かし、素早く運用を開始して走りながら修正を重ねるというアプローチによって環境変化への弾力的な対応を行ったのだ。

 もし従来通りに外注で対応しようとすれば、それを待つ間に部署のキャパシティーが耐えられなくなっていたかもしれない。システム内製・改善のサイクルを高速化できるツールを用い、その活用スキルを庁内全体で高めたことで、神戸市はこのような事例が現場主導で生まれるような状況に近づきつつある。

自治体において「高速なITプロジェクト」はありえるか?

 連載の第3回となる次回は、窓口業務改革を通じて、住民の利便性向上にチャレンジする2つの自治体の取り組みを紹介する。これらの自治体は企画から実装までを従来では考えられないほどの速さで実行している。「お役所仕事」という言葉に象徴されるように、自治体の仕事は遅いものという常識が古くから存在するが、どのようにしてこれらの自治体がその壁を打破しているのかを追う。

著者プロフィール・蒲原大輔

サイボウズ株式会社 営業戦略部。新卒で品川区役所に入庁し、約5年7カ月自治体職員として勤務。自治体の業務の非効率性や組織人事・風土の問題を解決するため、2016年にサイボウズに入社。18年に鎌倉市に働き方改革フェローとして派遣。IT(ローコードツール)を活用して自治体とともに業務効率化に取り組みながら、公務員コミュニティーの運営や新しい人事モデルの提唱を行っている。「公務員の仕事をもっと面白く」がモチベーションの源泉。


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