中国産CGアニメがディズニーやピクサーを駆逐する――市場規模1兆円「中国映画ビジネス」の帰趨:中国アニメ『羅小黒戦記』ヒットの舞台裏【後編】(4/7 ページ)
日本のミニシアターでロングランヒットを続けているアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』は、中国では2019年9月に公開され、中国国内で3.1億元(約48億円)の興行収入を記録した。アニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏に、アニメ業界で生まれつつある日本と中国との新しい関係を聞く。
日本のアニメはネット配信で見られているが、表現規制は強化
――ここで改めて、中国で日本のアニメがどのように受け入れられているのかを聞きます。先ほどの話では、日本のアニメはネット配信で見られているとのことですが?
数土氏: 『ドラえもん』や『ポケットモンスター』のようなファミリー向けのビッグコンテンツは別として、いわゆる若者が見る作品は、基本的にネット配信になりますね。……というよりも、日本のアニメを中国のテレビで放送することは事実上、禁止されていますから。
――なぜ禁止されているのですか? 表現的な問題でしょうか。
数土氏: そうではなくて、中国のアニメ産業を保護する【※】ためですね。そうした政策自体は中国だけでなく、ヨーロッパでもやっていますし、韓国でもやっていることなので。
【※自国のアニメ産業を保護する】中国ではテレビで放送されるアニメのうち、中国製の作品が全体の7割以上になるよう指示されているほか、ゴールデンタイムに中国製以外のアニメを放送することは禁止されている
――ネット配信では、そうした日本のアニメに対する規制はないのですか?
数土氏: 以前はネット配信とテレビでは管轄省庁が違っていたので、ネット配信のほうは事実上、テレビのような規制がなかったんです。そのためテレビでの放送に代わるものとして、日本のアニメをネットで配信することが増えていきました。
ところが今はテレビと管轄省庁が一緒になったために、ネット配信もここ1、2年で急速に規制が強くなっています。そちらは産業保護の目的ではなくて、表現に関する規制ですが。
――ここ最近の中国における表現規制の強化は、日本のアニメをターゲットにしているわけではなくて、中国国内で作られた実写映画や欧米産のゲームなども含めた、全体的な傾向ですよね?
数土氏: その通りです。暴力的な表現や性的な表現、それから思想的な表現はNGだと言うんですけど、何がダメかのスタンダードが曖昧なのですよ。だから中国企業が日本のアニメの配信権を買っても、いざ配信しようとすると直前にNGが出たりすることがあるんです。そういったリスクを避けるために、中国側としては以前ほど高いお金を出して配信権を買わなくなってきたというのが、最近の傾向ですね。
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