「外国人観光客はお断り」という“塩対応”が、よろしくない理由:スピン経済の歩き方(1/6 ページ)
新型コロナの感染拡大を受けて、観光産業が厳しい状況に置かれている。こうした事態を受けて、「日本人観光客を大切にしろ」という声が出ているが、筆者の窪田氏はこうした動きに懸念を示す。なぜかというと……。
世界が経済活動の再開へ向けて動き始める中で、感染爆発も起きず死者も少ない日本に早く遊びに行きたいというラブコールが増えてきた。
例えば、既に長期の自粛生活のフラストレーションを発散させる「リベンジ消費」で国内旅行が盛り上がっている中国では、「行きたい海外旅行先」として「日本」の名を挙げる人がダントツに多いと複数の意識調査が示している。また、日本へのスキー客が多いオーストラリアでも、クリスマス休暇に海外渡航制限が解除される見通しがでた途端、長野県の白馬村などのホテルに予約が入り始めた。アメリカでもツアー会社が秋の日本ツアーの販売をスタートさせたという。
ということはつまり、我々日本人が考えているよりはるかに早くインバウンドが回復する可能性が高いということでもあるのだ。
「感染拡大の恐れがある中で、よその国に遊びに行こうなんて非常識すぎる」と怒りに震える方も多いことだろう。中には、「おらが村にコロナを持ち込むな!」と言わんばかりに、「外国人観光客狩り」の準備をはじめてしまう郷土愛の強い方もいらっしゃるかもしれない。
ただ、あれだけすさまじい数の死者が出たスペインの政府観光局が、7月から日本人を含む外国人観光客の受け入れを再開すると発表したように、経済の弱い国は大量の「コロナ不況死」を出さないため、インバウンドに活路を見い出さざるを得ない。スペインと同じくらい生産性が低く、同じくらい財政に問題を抱えている日本も遅かれ早かれ同様の「決断」を迫られる可能性はかなり高いのだ。
そんな中で、今回のコロナ禍をいい教訓に、観光も「国内回帰」すべきと主張する方たちが増えている。観光業がここまで深刻なダメージを受けたのはインバウンドに偏重していたからなので、アフターコロナはもっと日本人観光客の誘致に力を入れるべきだというのだ。
2019年の日本人国内旅行消費額は21.9兆円。一方、訪日外国人消費額は4.8兆円。バブルだなんだといいながらも日本人旅行者の5分の1程度のカネしか落とさず、観光公害を広める連中をチヤホヤするよりも、世界一の民度を誇る日本人が落とす21兆円を伸ばしていくことのほうが感染対策的にも安全だし、日本経済のためになる。怪しい委託費で叩かれている「Go Toキャンペーン」もそんな発想から進められている。
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