なぜ日本人は「ネガティブ思考」なのか 新型コロナと水商売の関係:スピン経済の歩き方(5/6 ページ)
東京都で、新型コロナの感染者が増えてきた。こうした事態に対して、「自分の仕事はどうなる?」「日本経済がヤバいでしょ」などと悲観的に考える人も多いのでは。なぜネガティブ思考に陥るのかというと……。
水商売は“重要な臓器”
これらの2つの要素に加えて、日本人をさらに悲観的にしているのが3つ目の「水商売の自粛」だ。
水商売と聞くと、クラスターの温床だなんだとやたらと目の敵にされて、他の飲食店から「濃厚接触サービスのある店のせいで巻き添いを食らっている」などと槍玉にあげられることも多いため、何やら日本経済的にはそこまで重要視されていない人たちのように誤解を受けている方も多いかもしれない。
が、それは大きな誤解で、実は「水商売」というのは日本経済を支えている重要なインフラなのだ。一般社団法人 日本フードサービス協会が推計した18年の外食産業市場規模によれば、外食産業の中でレストランなどの飲食店をのぞいた、料飲主体部門(喫茶店・居酒屋・ビヤホール、料亭・バーなど)は4兆9766億円となっている。
その内訳を見れば、「居酒屋・ビアホール」「喫茶店」はそれぞれ約1兆円規模であるのに対して、「バー・キャバレー ナイトクラブ」は2兆4594億円と、なんと料飲主体部門の半分を占めているのだ。
これだけの経済を動かしていることに加えて、社会への影響もハンパではない。例えば、よくコンビニは日本社会のインフラだと言われる。流通、小売、雇用を生み出して地域経済に貢献し、さらにそのネットワークが日本中に張り巡らされているからだ。
その理屈を踏まえれば、キャバクラやスナックのようないわゆる「接待を伴う飲食店」もインフラである。酒の流通を生み出しているだけではなく、地域の経済活動を生み出す拠点となっているからだ。
例えば、仕事の同僚や取引先の人間とそのような店で親交を深めることで生まれる仕事もある。また、そこで働く女性に恋をすれば、気を引くためにプレゼントを貢いだり、高価な酒を注文したりという新たな消費が生まれる。また、水商売協会が主張しているように、このようなお店がシングルマザーなど経済的困窮する女性たちの働き先になっている現実もあるのだ。
では、そんなインフラが日本中にどれだけあるのかというと、警察庁によれば19年末、スナック、パブ、クラブ、キャバレーという接待飲食等営業の許可数は6万3466件だ。一般社団法人、日本フランチャイズチェーン協会の20年1月度のデータではコンビニの店舗数は5万5581店である。
良い、悪いという話ではなく、日本を人間、経済活動を血管に例えると、水商売というのは血を全身にめぐらせるためには、かなり重要な臓器なのだ。それを今、日本では「命が大切だ」と止めている。
気持ちはよく分かるが、このインフラの大きさからすれば、あまりに営業自粛が長引けば、コロナで亡くなった925人をゆうに超えるおびただしい数の人間が「経済死」してしまうだろう。
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