SNS活用から紐解く、コロナ時代の企業コミュニケーション:企業SNS「中の人」がいま考えるべきこと(4/6 ページ)
社会を大きく揺るがした新型コロナウイルス。これにより、消費者のSNS利用時間は増加するする傾向に。この傾向や、新型コロナは企業のコミュニケーションにどう影響を与えたか? 新進気鋭のメディアリサーチャー・天野彬氏が解説する。
SNSの観点から注目すると……
この連載で扱っている「SNS」からは、主に「(3)必要なものをつくるイノベーション」「(4)情報提供、啓発活動」「(5)参加のための仕組みづくり」のアクションが目立ちました。
(3)の「必要なものをつくるイノベーション」に関して、Instagramが新型コロナに苦慮するお店への支援機能をローンチしたことが注目に値します。ストーリーズのスタンプで、またはプロフィールからの遷移でお気に入りのお店へのギフトカードやフードオーダー、寄付などができるようになりました。
ここで面白いのは、ユーザー側が「寄付したよ」というステッカーを貼れること。「いいことをした感」を自然に出せるという点で、支援とともにユーザーの承認欲求も満たせる仕組みになっています。Instagramという場の特性を生かしていること、また一般的にはネガティブなものとしても捉えられる承認欲求をポジティブなものへと転換させている点が興味深いと感じました。
Instagram Liveから寄付できる仕組みも実装されました。今、プラットフォームとしてできることをしている点で公共的であると同時に、もともとInstagramは広告以外の収益の柱を求めてショッピング・決済分野にも力を入れ始めていたことを想起するならば、企業戦略的にも合致する動きであると分かります。
ロゴも「ソーシャルディスタンス」
具体的取り組みの(4)として挙げた、啓発活動に含まれる面白い動きは、「ソーシャルディスタンス(他者との距離を2メートル以上保つこと)」を周知するために、企業がブランドのロゴを変えた事例が相次いだことです。
普段はロゴが重なり合っているAudi(独)も、またVolkswagen(独)も「適切な距離を保っています」とメッセージすることで、あなたも周りの人との距離をあけるよう気を付けてと訴えかけていました。
マクドナルドも、おなじみの「Mマーク」のロゴが距離を取っています。ロゴというのは企業の統一性を守るもので、一般的にアレンジはご法度です。それが、ロゴいじりシリーズとしてさまざまなブランドが乗っかっていったのはとても象徴的でした。
これに関連するように筆者が感じているのが、アメリカでの黒人男性ジョージ・フロイドさん暴行死に際して、各種SNS、音楽配信、動画配信のサービスなどが一斉にサービスをブラックアウトして抗議の意を示したことでした。今こそともに戦わなければならないといった説明がなされていましたが、ロゴの間隔をソーシャルディスタンス的に開ける動きのように、みんなで一斉にアクションすることが増えてきているというのはとても現代的な、大きな一つの流れなのかもしれないと感じさせられます。
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