SNS活用から紐解く、コロナ時代の企業コミュニケーション:企業SNS「中の人」がいま考えるべきこと(6/6 ページ)
社会を大きく揺るがした新型コロナウイルス。これにより、消費者のSNS利用時間は増加するする傾向に。この傾向や、新型コロナは企業のコミュニケーションにどう影響を与えたか? 新進気鋭のメディアリサーチャー・天野彬氏が解説する。
今問われている広告の在り方とは
既に述べたように、この広告は若者向けのものです。しかしながら、筆者自身もこれを見て励まされるような気持ちを覚えたのです。それはなぜでしょうか?
広告は「広く告げる」と書くため、多くの方は「拡声器で方々に知らせる」ようなものとしてイメージされています。つまり、メディアの力を借りて、たくさんの人に知らせることができるから、広告なのだということです(その見方に立脚して、いまは「広く告げる」よりも「狭く告げる」ことが効果的なのだと語る人もいるでしょう)。
ただし、「広く告げる」にはもう一つの意味があります。それは社会そのものにスコープを広げて、告げるということです。ポカリスエットの例でいえば、商品を中心に置きつつも、その周縁にある人々の暮らしや社会のいまをも捉えるようなかたちで、コミュニケーションを成立させている――だからこそ、筆者自身にも響くものがあったのだと感じています。
広告とは、「広く伝える(リーチ)」だけでなく、ブランドと社会の接点そのものを広く捉えて、告げること。まさに社会がいまのような緊急事態に置かれているときこそ、その視点が求められるようにも思います。そのような「広く捉えて告げること」を体現しているという意味においても、このポカリスエットの事例はあるべき広告コミュニケーションに他ならないと考えています。
著者プロフィール
天野 彬(あまの あきら)
1986年生まれ。東京大学大学院学際情報学府修了(M.A.)。スマートフォンユーザーやSNSの動向に関する研究/執筆/コンサルティングが専門。
主著に『シェアしたがる心理〜SNSの情報環境を読み解く7つの視点〜』(2017年、宣伝会議)、『SNS変遷史〜「いいね!」でつながる社会のゆくえ〜』(2019年、イースト新書)、『情報メディア白書』(共著、2016〜2020年、ダイヤモンド社)など。経済番組でのコメンテーターや各種講演でのスピーカーなど経験多数。
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