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日本アニメは本当に「ガラパゴス」なのか――待ち受ける真の危機に迫るジャーナリスト数土直志 激動のアニメビジネスを斬る(2/5 ページ)

日本アニメの「ガラパゴス化」が最近問題視されている。しかし筆者は本当の課題はそこに無いと指摘。世界的人気な日本アニメの本当の危機とは。

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アトム、ガッチャマン……昔からグローバルだった日本アニメ

 近年海外ビジネスの急成長が目立つ日本アニメだが、海外進出の歴史はかなり昔に遡(さかのぼ)る。1960年代には早くもTVアニメ草創期の『鉄腕アトム』が『アストロボーイ(Astro Boy)』のタイトルで全米放送され人気を博している。さらに『マッハGoGoGo』『科学忍者隊ガッチャマン』なども早い時期に放送された。ハリウッドの大物監督ウォシャウスキー姉妹が『マッハGoGoGo』を原作に大作『スピード・レーサー』を監督したのは、幼少期に本作をテレビで見ていたからだ。

 ヨーロッパでも、1970年代〜80年代に日本アニメが大量に放送された。『UFOロボグレンダイザー』や『聖闘士星矢』など。この時代に世界で大量にアニメーション制作をしていたのは米国と日本のみで、さらに日本アニメの販売価格が安かった事情もあった。

 日本アニメはこの時点で、かなりグローバル仕様にされていた。現地向けにローカライズされていた。『鉄腕アトム』だけでなく、『マッハGoGoGo』(『スピード・レーサー(Speed Racer)』)や『科学忍者隊ガッチャマン』(『Gフォース(G-Force: Guardians of Space)』)などではタイトルやキャラクター名も変更している。

 ヨーロッパでも同様で、フランス、イタリアを中心に展開した作品は、タイトルやキャラクター名だけでなく主題歌も現地歌手の別の歌に差し替えられている。

 さらに大幅に改変した例もある。1985年に米国で放送された『ロボテック』は、『超時空要塞マクロス』『超時空騎団サザンクロス』『機甲創世記モスピーダ』の3つの作品を1つにまとめ上げ、独自の作品に編集し直された。『百獣王ゴライオン』と『機甲艦隊ダイラガーXV』は合わせて『ボルトロン』という作品になった。1985年に米国公開された『風の谷のナウシカ』のタイトルは『Warriors of the Wind(風の戦士たち)』だ。上映時間116分は22分も切られ、冒険アクションに変えられた。

 この時代に世界が欲しがったのは、日本アニメの作品でなく低価格の映像だ。日本の固有性は消し去るべきものだったのだ。

AKIRAが変えた日本アニメの潮流

 ところが90年代に新たな潮流が生まれた。1989年に映画『AKIRA』が米国公開されたのがきっかけだ。それまで世界のアニメーションはキッズ向けやアートアニメーションばかりだったのに対し、『AKIRA』はエンターテインメントたっぷりのSF作品。凝った世界観や大胆な暴力表現も含めてヤングアダルト向けに届けられた。これが世界の映像ファンを熱狂させた。

 作品の舞台はネオ東京で、登場人物はみるからにアジア系。「日本」の存在も強烈に意識もさせる。90年代、世界が日本アニメを発見した。

 『AKIRA』で意識された大人向けエンタメ作品は、その後『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』などに引き継がれていく。ヤングアダルト向けでストーリー性が豊かでエッジの効いた作品群は、日本独特と理解されるようになる。

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