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「あつ森」効果で営業利益428%増! ソフトとハードを同時展開する任天堂のデジタルマーケティング戦略「巣ごもり需要」だけじゃない(2/3 ページ)

任天堂は4〜6月期の売上高は前年同期比108.1%増の約3581億円。営業利益は、前年同期が約274億円に対し、今期は約1447億円という数字をたたき出し、前年同期比で約5倍となる、427.7%増という空前の結果を出している。

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「マリオカート8 デラックス」も特需

 新作タイトルだけでなく、既存タイトルの売り上げも”特需”となっており、17年4月に発売した「マリオカート8 デラックス」も今期新たに約197万本を販売している。任天堂のWebサイトによると、「マリオカート8 デラックス」の世界累計販売本数は6月末時点で約2674万本に伸ばした。現時点では「あつ森」を超えるヒットタイトルとして走り続けている。

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「マリオカート8 デラックス」の世界累計販売本数は6月末時点で約2674万本

 こうして見ると、コロナによる「巣ごもり需要」によりスイッチのニーズが世界的に拡大し、3月20日に発売した「あつ森」ヒットの一因になったことが推察される。「あつ森」のメガヒットにより新規ハード需要を引き起こし、他のソフトの販売促進にも貢献。好循環を生み出したという流れのようだ。

 あつ森などのソフトと、スイッチなどのハードーー。この双方において業績が好調なのが、任天堂の特徴だ。4〜6月期の売上総利益は約2115億円で、前年同期比153.6%の伸びとなった。このうち、ハードの売上高比率は47.2%で、前年同期比3.3ポイント減に対し、ソフトの売上高比率は82.5%で、同8.4ポイント上昇している。

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4〜6月期の売上総利益は約2115億円で、前年同期比153.6%の伸びとなった。ハードの売上高比率は47.2%で、前年同期比3.3ポイント減に対し、ソフトの売上高比率は82.5%で、同8.4ポイント上昇している

 つまり、昨年度はハードの売り上げの比率が高く、今年度は「あつ森」をはじめとするソフトの売り上げが相対的に好調なのが特徴だ。特に、ソフトのダウンロード販売をはじめとするデジタルの売り上げが好成績をあげている。

 2020年4〜6月期のデジタル売上高は約1010億円で、前年同期比で229.9%伸びた。ソフトの売り上げ全体のうち、デジタルの割合は半分以上の55.6%を占める。デジタル売上高のうち、パッケージ販売とダウンロード販売を併用しているソフトの売り上げが683億円で、67.7%を占めた。残りはダウンロード専用ソフトや追加ダウンロードコンテンツなどの売り上げが326億円で、32.3%を占める。

 現在のスイッチのソフトは、大半のソフトがパッケージ版とダウンロード版の両方を展開している。一般的にはパッケージ版のほうが値引き販売されていて、ソフトを安く購入しやすいメリットがユーザーにはある。ところがコロナ禍で外出もままならない状況からか、外に出たり配送を待ったりする必要がなく、即座にゲームをダウンロードして始められるデジタルの手軽さに軍配が上がったようだ。

 実は、こうしたハードとソフトが一体となった戦略を取れるのが、任天堂の強みでもある。ハードの屋台骨となる主要作品の多くが、他社製のソフトで支えられているソニーのプレイステーション(PS)4とは異なり、任天堂のハードはその主要ソフトの多くを自社製ソフトで占めている。自前のデジタルプラットフォームで自社コンテンツを中心に展開できるため、一体となってより自由に柔軟に展開できる強みがあるのだ。

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4〜6月期のデジタル売上高は約1010億円で、前年同期比で229.9%伸びた

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