中国発のヒット映画「ロシャオヘイセンキ」の日本語吹替版が11月に公開 制作は『鬼滅の刃』を手掛けるアニプレックス
中国で制作され、日本でも異例のロングランヒットとなった長編アニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』。日本配給を行っているチームジョイ(東京・渋谷)は、この作品の日本語吹替版を、2020年11月7日より全国公開することを8月27日に発表した。
中国で制作され、日本でもミニシアターでの公開ながら異例のロングランヒットとなった長編アニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』。日本配給を行っているチームジョイ(東京・渋谷)は、この作品の日本語吹替版を、2020年11月7日より全国公開することを8月27日に発表した。
『羅小黒戦記』は中国の漫画家でもあるMTJJ監督と、寒木春華(HMCH)スタジオが制作した作品だ。11年からWebアニメシリーズとして発表し、中国国内で高い人気を獲得。19年には劇場用のオリジナル長編アニメ映画を制作し、中国での興行収入は約48億円を記録した。
この劇場版は日本国内でもミニシアターでの上映ながら、中国国内とほぼ同時期の19年9月に公開した。アニメ業界の関係者がSNSで話題にしたことをきっかけに、日本のアニメファンからも注目を集めるようになり、一時はチケットが2週間前に予約完売するほどのヒットを記録。新型コロナウイルスによる映画館の営業自粛により本作の上映も中断していたものの、営業再開後の20年5月からは、神奈川県・川崎市など日本各地の劇場で再び多くの観客を集めていた。
ITmedia ビジネスオンラインでは本作のヒットに注目し、日本配給を担当したチームジョイの白金(パイジン)代表取締役CEOをはじめとする関係者に取材し、ヒットの背景と、その影響を多角的に分析した記事を掲載した。
白金CEOは取材の際に「日本の大手アニメ関連企業をパートナーとして、日本語吹替版による再展開を予定している」と明かしていた。今回の発表で、そのパートナーがソニーグループのアニプレックスであることが明らかになった。
パートナーは『鬼滅の刃』のアニプレックス
アニプレックスといえば、19年のテレビアニメ放送後も話題を席巻し、20年10月には新作映画も公開される『鬼滅の刃』をはじめ、コロナ自粛が続く20年8月においてもヒットを記録したアニメ映画『劇場版 Fate/stay night [Heaven's Feel]』などの人気作を多数擁している、国内で勢いのあるアニメ企業だ。『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ) ぼくが選ぶ未来』と題された日本語吹替版は、アニプレックスが制作を担当し、アニプレックスとチームジョイの共同配給になる。
日本語吹替のキャスティングは、主人公である黒猫の妖精シャオヘイを、新海誠監督作品『言の葉の庭』など多数の作品でヒロインを務めている花澤香菜を起用。植物を自在に操る妖精フーシーは、『鬼滅の刃』の冨岡義勇役などを演じている櫻井孝宏。そして人間でありながら最強の執行人であるムゲンを、声優としてはもちろんテレビドラマ『半沢直樹』などで俳優・歌手としても活躍している宮野真守と、アニメファンも納得のキャストが顔をそろえている。
また日本語吹替版の音響監督は、『劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-』などの岩浪美和が担当。岩浪監督といえば、自身が音響を手掛けたアニメ作品の企画上映の際に、映画館の音響システムを自ら細かく調整するといった強いこだわりで知られているだけに、今回の日本語吹替版も万全の態勢で制作されていることが分かる。
今回の発表に合わせて公開された特報では、以上に紹介した各キャストの演技が確認できるようにした。
日本語吹替版の発表にあたり、アニプレックスの中山信宏プロデューサーは以下のコメントを寄せている。
「中国で製作されていながら、どこの国にも通じる純粋に面白い物語だと思いましたし、画面にこめられたクリエイターの熱量には、アニメーション製作に関わる者として、ある意味、嫉妬をするほどでした。そしてそんな気持ちを超えて、この作品のファンになった者として、日本語版を作ることで、より多くの人にこの作品の面白さ、素晴らしさが伝えられるのではないかと思い、今回の企画を進めました。
今この吹替版制作のアシスタントを務めているのは、社内で私にこの作品を薦めてくれた者です。権利許諾など、彼が率先して動いてくれたおかげで、この吹替版を制作することができました。これもまた『ロシャオヘイセンキ』という作品が持つ魅力に魅了された者の熱量によってなしえたものだと思います」
日本語吹替版もまた、『羅小黒戦記』という作品の持つ“熱量”に導かれて世に出たものとなっている。今なおコロナ禍の影響がぬぐえない日本の映画ビジネスに、本作の全国公開がどのような効果をもたらすのか注目だ。
関連記事
- 異例のロングランヒット、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』の舞台裏に迫る
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』というタイトルのアニメ映画が、東京都内のミニシアターで、2019年9月から劇場を替えつつロングランとなっていた。首都圏だけでなく、大阪、名古屋、札幌など日本各地のミニシアターでも順次上映されており、日本での総観客数はすでに3万人を超えている。ディズニー以外の海外製アニメ、なかでも中国製のアニメ映画が、日本の映画館でこのようなロングランヒットになった例は、これまでにあまり聞いたことがない。日本配給を手掛けた白金氏にヒットの舞台裏を聞いた。 - 中国産CGアニメがディズニーやピクサーを駆逐する――市場規模1兆円「中国映画ビジネス」の帰趨
日本のミニシアターでロングランヒットを続けているアニメ映画『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』は、中国では2019年9月に公開され、中国国内で3.1億元(約48億円)の興行収入を記録した。アニメビジネスに詳しいジャーナリストの数土直志氏に、アニメ業界で生まれつつある日本と中国との新しい関係を聞く。 - 『鋼の錬金術師』監督が語る、中国アニメ『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』ロングランヒットの訳
『羅小黒戦記(ロシャオヘイセンキ)』というタイトルのアニメ映画が、東京都内のミニシアターで、2019年9月から劇場を替えつつロングランを続けている――。今回の中編ではアニメーション監督で本作の制作スタッフとも交流のある、アニメーター・アニメ演出家の入江泰浩氏に『羅小黒戦記』の魅力と、日本で人気が広がる過程について聞く。作画だけでなく「感動できる作品」になっていることに衝撃を受けたという。 - アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が指摘「Netflixで制作費が増えても、現場のアニメーターには還元されない」
日本のアニメーション業界にはびこる低賃金や長時間労働といった過酷な労働現場の実態――。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』の総作画監督を務める西位輝実さんにインタビュー。後編では西位さんに、Netflixをはじめとする、近年の日本アニメに進出している海外資本のビジネスについて聞いた。 - アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が語るアニメーター業界の「過酷な実態」
アニメ業界には未だに低賃金や長時間労働といった過酷な労働環境がはびこっている。『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』などでキャラクターデザインを担当している西位輝実さんに、その実態を聞いた。 - 「これさぁ、悪いんだけど、捨ててくれる?」――『ジャンプ』伝説の編集長が、数億円を費やした『ドラゴンボールのゲーム事業』を容赦なく“ボツ”にした真相
鳥山明氏の『DRAGON BALL(ドラゴンボール)』の担当編集者だったマシリトこと鳥嶋和彦氏はかつて、同作のビデオゲームを開発していたバンダイに対して、数億円の予算を投じたゲーム開発をいったん中止させた。それはいったいなぜなのか。そしてそのとき、ゲーム会社と原作元の間にはどのような考え方の違いがあったのか。“ボツ”にした経緯と真相をお届けする。 - 『ジャンプ』伝説の編集長が、『ドラゴンボール』のゲーム化で断ち切った「クソゲーを生む悪循環」
『ドラゴンボール』の担当編集者だったマシリトはかつて、同作のビデオゲームを開発していたバンダイのプロデューサーに対して、数億円の予算を投じたそのゲーム開発をいったん中止させるという、強烈なダメ出しをした。ゲーム会社と原作元の間にはどのような考え方の違いがあったのか。「クソゲーを生む悪循環」をいかにして断ち切ったのか?
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.