シトロエン・ベルランゴ 商用車派生ミニバンの世界:池田直渡「週刊モータージャーナル」(8/8 ページ)
商用車と商用車ベースのクルマにはまた独特の良さがあって、筆者もそういう世界は聞きかじり程度に知っている。こんな世界にこの8月、ニューカマーとして日本市場にやってきたのがこのシトロエン・ベルランゴである。いろいろ覚悟ができる人にとって、ノア/ボクシーを避けつつ、家族をもてなすクルマという意味での存在価値はそれなりに高い。さらにいえば、運転することの楽しさも放棄しないで済む。
さらにリアドア。クルマに乗り込んでから閉めようとすると、ドアハンドルがほぼ隠れてしまっていて握れない。にもかかわらずスライドドアの重さは相当にあるので、多分子供だと操作できない。外側から大人が閉めてあげないといけない。
後日談 訂正とお詫び 2020/09/08 13:00
ベルランゴのリアドアハンドルについて、読者のコメント欄で「上の方に別にハンドルが付いているのでは?」とご指摘をいただいた。幸いまだ手元にクルマがあるので、慌てて見にいった。おっしゃる通りでした。
参考までに開けた状態と閉めた状態の写真を並べてみる。閉めた状態で見れば一目瞭然、明らかに取っ手といえる形状になっている。
これは筆者が後席に関して停止中に乗車しての検分だけで書いてしまったことに原因がある。ひとり試乗なので止むを得なかったのだが、リアシートに座って、ちゃんとドアを閉めて走行していれば気がついた話だったと思う。
なので、ベルランゴのリアドアの問題は筆者の勘違いによる問題提起であった。誤った情報をお伝えしてしまったみなさまにお詫びするとともに、コメントでご指摘いただいた読者の方に深く御礼を述べる次第である。
さて、そんなわけで、良いところも悪いところもあるベルランゴ。走るものとしては見どころが多く、細かい気遣いではちょっと残念な感じだった。残念といえば今のところラインアップされているのは2列シートのみだが、3列仕様があればまた少し景色が変わってくるだろう。いろいろ覚悟ができる人にとって、ノア/ボクシーを避けつつ、家族をもてなすクルマという意味での存在価値はそれなりに高い。さらにいえば、運転することの楽しさも放棄しないで済む。まあ現実的な話、ディーラーの数が少ないので、製品だけで比べるのは難しいけれど、それでもちょっと面白いクルマが現れたと筆者は思う。
筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)
1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。
以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、Youtubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。
関連記事
- ハリアーはアフターコロナのブースターとなるか?
多くの読者はすでにハリアーが今年の大注目モデルであること、そして売れ行き的にもとんでもないことになっていることをご存知のことと思う。7月17日にトヨタから発表された受注状況は、それ自体がちょっとしたニュースになっている。 - RAV4 PHV 現時点の最適解なれど
トヨタはRAV4 PHVを次世代システムとして市場投入した。世間のうわさは知らないが、これは早目対応の部類だと思う。理由は簡単。500万円のクルマはそうたくさん売れないからだ。売れ行きの主流がHVからPHVへ移行するには、PHVが250万円程度で売れるようにならなくては無理だ。たった18.1kWhのリチウムイオンバッテリーでも、こんな価格になってしまうのだ。まあそこにはトヨタ一流の見切りもあってのことだが。 - 新型ハリアーはトヨタの新たな到達点
トヨタは、売れ筋のSUVマーケットにまた強力な新兵器を投入する。SUVバリエーションの最後のピースであるハリアーだ。結論からいえば、新型ハリアーは、多面的なその調律に成功し、トヨタブランドの範疇(はんちゅう)の高級というものが、バラバラの要素ではなく、一つの方向にキチンと収斂(しゅうれん)して、なるほどと思わせるものになっていた。 - 新型プジョー508は魅力的だが……
PSAグループのプジョーが新型プジョー508を発売。デザインとハンドリングに集中して開発を行うことで、カッコよく走って楽しいクルマを目指した。一方で、選択と集中の結果、犠牲になったものもいろいろとある。 - エコカー戦争の局面を変えたプロボックスハイブリッド
トヨタ自動車は商用バンのベストセラー、プロボックスをマイナーチェンジ。焦点となるのはハイブリッドモデルの追加だ。プリウスの発売から24年を経て、遂にプロボックスにまでハイブリッドが普及したことになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.