偽装ファクタリングに注意 コロナ禍で注目される資金調達手段、ファクタリング:「近づけない、集めない」時代を生き抜く、企業の知恵(4/4 ページ)
コロナ禍のもと、事業者が苦しんでいるものの1つが資金繰りだ。そんな中、金融機関からの融資に代わり、スピーディかつ信用が小さくても利用しやすい「ファクタリング」が注目されている。どんなメリットがあり、何に注意しなくてはいけないのか。
ファクタリング市場の拡大に欠かせない金融機関との連携
ファクタリングは特に中小事業者にとっては有益な資金調達手段であり、ファクタリング市場がより拡大していけば、中小事業者の資金繰りの安定化等につながっていくと考えられる。
各ファクタリング業者は、ファクタリングのメリットをより多くの事業者に認識いただくよう努めているが、それに加えて、金融機関と連携するかたちでも事業者へのファクタリングの提供を進めている(「MF KESSAI、福岡銀行と2者間ファクタリングの共同事業化に向けた実証実験を開始」)
連携することで、金融機関にとっては、これまで融資の対象としにくかった中小事業者やスタートアップに、ファクタリングという資金調達手段を提供することになり、将来的に当該事業者が成長して業容が大きくなった際には融資等の取引拡大を見込むことができるというメリットがある。地域の事業者に必要な資金を提供することは、地域経済の活性化につながっていくものであることも金融機関にとっては利点になる。
また、事業者にとっては、金融機関と連携しているファクタリング業者であれば安心して利用でき、ファクタリングという資金調達の選択肢も増えるという点がメリットとなる。
さらに、ファクタリング業者にとっては、ファクタリング市場の拡大につながることが利点となる。
以上のように、金融機関との連携によるファクタリングは、金融機関・事業者・ファクタリング業者のすべてに有益な、いわば「三方よし」の取り組みである。今後、ファクタリング業者と金融機関との連携は拡大していくと考えられる。
このように、金融機関の融資の対象となりにくい中小事業者にとってファクタリングは有益な資金調達手段となり得るものである。ただし、事業者がファクタリングを利用する際には、偽装ファクタリングという悪質な業者の存在を認識したうえで、そうでない業者との取引を行うことが必要である。
筆者プロフィール:家田 明(いえだあきら) MF KESSAI株式会社 取締役会長
約30年間にわたり日本銀行に在籍し、金融機関におけるリスク管理に関する研究や考査などに携わり、金融機構局金融高度化センター長として、ITを活用した金融の高度化、リスク管理と内部監査、地域プロジェクト支援、金融機関の働き方など、金融機関のリスク管理・経営管理の高度化を支援。金融高度化センターでは、受注データのモデル分析を通じて、信用度を評価する研究プロジェクトを進める。こうした経験を生かし、現在マネーフォワードのグループ会社で、ファクタリング事業を手がけるMF KESSAIにて、従来の融資などでは資金調達が難しい中小・零細企業の支援を行う他、イベント登壇などを多数行っている。
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