コロナで吹き飛んだ経済効果400億円 オンライン開催に踏み切った「さっぽろオータムフェスト」の勝算――「Amazonと同じにはしない」:「近づけない、集めない」 時代を生き抜く、企業の知恵(3/4 ページ)
来場者236.4万人、経済効果400億円とも試算される札幌市の食の祭典「さっぽろオータムフェスト」。今年13回目になる「さっぽろオータムフェスト」は新型コロナウイルスの影響でオンラインでの開催を余儀なくされた。単なるECサイトにしないために、どんな工夫をしたのか。キーマンたちに奮闘ぶりを聞いた。
YouTubeチャンネルとのコラボ
さらに、より広くさっぽろオータムフェストの魅力を発信するため、プロモーション面でもある仕掛けを施した。その一つが、北海道での暮らしや食の魅力をテーマとしたYouTubeチャンネル「愛里沙の北海道暮らし」とコラボした映像企画だ。
「道産食材の楽しみ方」というテーマで公開されるこの映像には、生産者である札幌市内の玉ねぎ農家が出演し、生産へのこだわりや、実際の収穫シーン、そしてその素材を活用した調理シーンまでがまとまっている。さらに映像内と同じ料理を自宅で再現し楽しめるよう、オンライン上でレシピの提供を行うなどの工夫が施されている。映像自体もよくSNSで見かけるような単純な調理動画ではなく、北海道の自然を感じられるような構成になっている。
YouTubeチャンネル「愛里沙の北海道暮らし」の運営会社であるTREASURE IN STOMACH(札幌市)の柴田愛里沙社長はオータムフェストを盛り上げたいと意気込む。
同社はもともと、菓子のD2C(Direct to Consumer)ブランドとして、ビーガンやグルテンフリーに対応した菓子の企画製造と販売を手掛けていた。製造した菓子は、札幌市内にある直営店舗の”issue sweets lab”や札幌パルコや大丸百貨店などの期間限定ストアで販売していたものの、新型コロナの影響は大きく、「一時的に店舗を休業しなければいけなくなるなど営業活動に支障をきたしました」(柴田社長)。
だが、そんな状況でも指をくわえて待っているわけにはいかない。”食と自然”をテーマに北海道の魅力を発信するYouTubeチャンネル”愛里沙の北海道暮らし”の動画コンテンツを作ったり、Instagramやnoteを使った情報発信の強化をしたり、できることをやってきた。
「オフラインが難しいならオンラインでできることを思いつく限りやってきました。直営店舗の”issue sweets lab”も9月にリニューアルを兼ねて営業を再開しましたが、今後はよりオンライン施策を中心としてお客さんとの接点を作っていこうと考えています。過去に好評だった”オンライン料理教室”を開催したり、ECサイトでお菓子を販売したりと、今までのオフラインでの体験を、どんどんオンラインでも実現させていきたいと思っています」
そのように話す柴田社長は、もともと新卒で東京の広告代理店に入社し、その後、札幌へUターンして菓子の企画製造・販売事業を始めたキャリアの持ち主だ。2019年に開催されたシードアクセラレータープログラム「Open Network Lab HOKKAIDO」では特別賞を受賞。菓子という商材をいかにしてオンラインと融合させ、新しいサービス・ユーザー体験に変えていくのかに注目が集まっている。
「今回、さっぽろオータムフェストがオンラインで開催されると知ったとき、ぜひ何か協力したいと感じました。私が運営するYouTubeチャンネルは道外や海外の視聴者が多いため、映像企画としてコラボすることで、道外の人たちにさっぽろオータムフェストを知ってもらうチャンスになるだろうと考え、観光協会さんへ企画を提案しました。
私自身が玉ねぎ農家さんを訪れ、その素材を使って調理する動画は、オンラインで”道産食材を楽しむ”というテーマにぴったりのコンテンツに仕上げることができたと思っています。レシピもオンライン上で提供しています」
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