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サツドラ富山浩樹社長が語る「ウィズコロナ時代のチェーンストア戦略」ドラッグストアから地域コネクティッドビジネスへ (2/5 ページ)

規模の追求という従来の基本戦略が機能不全を起こしつつある今、新時代のチェーンストアビジネス戦略はどうあるべきなのか――。サツドラホールディングスの富山浩樹社長に聞いた。

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地域コミュニティーに着目

――地域コミュニティーという考え方で、既に動き始めている取り組みはあるか

 まず初めに「EZOCA(エゾカ)」という共通ポイントカードのサービスを展開して、地域のプラットフォームとしての存在になろうとしている。EZOCAはサツドラを始め道内650店舗以上の提携店で利用できる年会費無料のポイントカードだ。

 EZOCAは単なる”お得なポイントカード”ではなく、地域だからこそ生きるコミュニティーの概念を、どのように仕組みとして盛り込むかを意識してサービスを設計した。現在は、サツドラだけではなくホクレンなど北海道で活躍する企業にも加盟店として入ってもらい、道内の世帯カバー率は約7割まで普及した。

――具体的にはどんなことに取り組んでいるのか?

 ターニングポイントの1つとして分かりやすい事例が、プロサッカーチームの北海道コンサドーレ札幌のサポートプログラム「コンサドーレEZOCA」の取り組みだ。これはEZOCAの加盟店で買い物をすることで、その一部を北海道コンサドーレ札幌に資金として還元し、チームを応援できる取り組み。主婦層などライトなファン層の獲得を課題としていた北海道コンサドーレ札幌に対し、当社から提案した。

 主婦などライトなファン層が自分の身銭を切って北海道コンサドーレ札幌に寄付する行為はかなりハードルが高い。だが、このようなプログラムがあると「せっかくだしEZOCAを使おう」というインセンティブが働く。このように経済合理性に加えて感情が乗ってくる仕組みをうまく提供できると、「日常の生活で使うチェーンストアを持っている」当社の強みがより生きてくると考えている。

 最近では北海道コンサドーレ札幌以外にも、バスケットボールのレバンガ北海道、バレーボールのヴォレアス北海道、Jリーグを目指す北海道十勝スカイアースなど地域のスポーツクラブとも類似の取り組みを進めていて、輪が広がってきているところだ。

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プロサッカーチームの北海道コンサドーレ札幌をサポートするプログラム「コンサドーレEZOCA」
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「コンサドーレEZOCA」の特徴

――実験店舗として位置付けている「サツドラ北8条店」ではどんな取り組みをしているのか。

 これからは小売の店舗も”単に商品を買う場”というだけでは不十分だ。何らかのサービスを提供したり、人が集まる場を作ったりすることで、「暮らしの質を高めていく」ことにフォーカスしていく必要がある。その前提でサツドラ北8条店ではいろいろな取り組みを進めている。

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「サツドラ北8条店」のラウンジスペース。早朝から地域の人々が集まっていて、店舗を”単に商品を買う場”とは位置付けていないサツドラの姿勢を見ることができた

 その中の1つが、サツドラ・サイバーエージェント・リテール向けAI(人工知能)カメラソリューションを提供するAWL(東京・千代田)の3社で共同事業化を目指している「リアル店舗のWeb化」だ。

 北8条店では店舗内に約80台のAIカメラを設置し、顧客の店内回遊状況の分析やデジタルサイネージ広告の閲覧状況といったアクション動向に加えて、年齢や性別など顧客自体の属性も分析している。AIカメラが客の視線を分析していてどの商品をどのくらい目にしたのか、手に取ったのかまで把握している。

 コロナ流行後はマスクをしている状態でもそれが検知できるよう、ソフトウェアをアップデートした。

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北8条店では店舗内に約80台のAIカメラを設置
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AIカメラが客の視線を分析していてどの商品をどのくらい目にしたのか、手に取ったのかまで把握している
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店内の混雑状況もエントランスに表示されていた

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