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社員が新型コロナ感染でも慌てない! 労務対応チェックリスト、初動から対外的発表まで(4/5 ページ)

従業員が新型コロナウイルスに感染した際に発生する各種問題のうち、労務に関する問題を主眼に、各企業で想定しておくべきこと、対応方法をまとめました。

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5.その他の従業員への対応

5-1.感染予防の周知徹底

 新型コロナウイルスに感染した従業員が出たことについては、社内の感染予防の徹底および感染拡大防止の観点から速やかに周知すべきです。もっとも、従業員本人の個人情報にも配慮し、目的との関係で内容については検討が必要です。すなわち、あらためての感染予防措置の徹底という目的からすると「誰が」感染したかという固有名詞は必要ありません

 また、体調不良などの気になる症状がある従業員に早期に申し出てもらうことで感染拡大を防ぐという目的からも、当該従業員が勤務するフロアや作業エリア、所属課などは開示してよいと考えますが、固有名詞の公表は必要ないと考えます。その他、周りの従業員が過度に不安にならないように、また感染者に対する偏見や差別が起きないよう注意が必要です。このような点を総合して社内に周知します。

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5-2.その他の従業員への自宅待機

 社内で新型コロナウイルス感染者が出た場合、企業としては営業を継続するかどうかを検討する必要があります。従業員の不安、感染拡大の防止、顧客との関係などから、濃厚接触者以外の他の従業員について、例えば同じフロア、同じ部署、同じ店舗の従業員についても一斉に休業とすることも考えなければなりません

5-3.その他の従業員への自宅待機中の賃金

 このような場合でも、在宅勤務が可能である場合には、在宅勤務を命じたうえでその賃金を支払うことになります。濃厚接触者か否かにかかわらず会社の自主判断によって一斉に休業・自宅待機させる場合は、不可抗力には該当しませんので、労働基準法26条に基づき、休業手当(平均賃金の6割以上)を支払う義務があります

5-4.不安で会社に出社できない社員への対応

 新型コロナウイルス感染者が出た職場において、会社が特に営業自粛をしない(自粛要請の対象になっていないことを前提とします)場合、そこで勤務する従業員が、感染が不安で出社できないと申し出てくる可能性があります。営業を継続するかどうかは企業の経営判断となりますが、企業が予防措置を講じていることを前提に、企業として就労を求めている以上、それに対して従業員の事情で応じられないということになれば、欠勤扱いになり、給与の支払い義務はありません。従業員によっては年次有給休暇を取得することもあるでしょうから、企業は時季変更権を行使できる事情がない限りは有給休暇を取得して休んでもらうことになります。

 ではこのような状況で年次有給休暇を取得せずに欠勤を続けた従業員に対して、解雇や懲戒処分の対象とするかどうかが問題となります。これについては、新型コロナウイルス感染拡大という非常事態での対応ということもあり、通常時とは異なる検討も必要になります。確かに、不安を感じつつも働いてくれている従業員の不満や公平性の問題が生じる一方で、従業員の心情も理解できる側面があるため、初手としては「ノーワーク・ノーペイ」で給与は支払わず、実際に処分をするか否かは、今後の新型コロナウイルスの状況を踏まえて慎重に判断した方が良いと考えます。欠勤している従業員の捉え方によっては「ウチの会社は新型コロナウイルスにかかってもいいから働け、働かないなら解雇する」という誤ったメッセージが拡散する可能性があるためです。

 またこのようなケースに限らず、日々の労働条件や労働環境に不満がある場合、この機会に従業員の不満が爆発する可能性があります。企業は、社内の雰囲気や従業員がどのような気持ちであるかをくみ取りながら、対応をしなければなりません。

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