上場延期で衝撃、中国・アントを知る5つのキーワード:浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(6/6 ページ)
史上最大のIPOと注目されていた中国アリババの金融子会社アント・グループの上場延期が11月3日に発表された。ジャック・マー氏ら幹部3人が前日に金融当局の指導を受け、上場計画の見直しを迫られたことが理由だ。本稿ではアントの歴史や事業構造、今後の見通しなどを5つのキーワードからひも解いていく。
5.「上場中止」「半年延期」で割れる
アントの評価額は、上場前に2800億ドル(約30兆円)に達し、世界最大のユニコーン(未上場で評価額10億ドル以上のスタートアップ)とされるショート動画アプリTikTok運営企業のバイトダンス(1400億ドル)の2倍に上る。
8月、アントが上場を発表したとき、株式市場は色めきだった。同社の株式は、アリババ創業者のジャック・マー氏が間接的に約半数を所有しており、アント初期メンバーも多くの株式が付与されているため、上場すれば多数の億万長者が出現する。
また、同社のIPOには個人株主の応募が殺到し、倍率は上海市場で872倍、香港市場でも400倍となった。
史上最大規模のIPOになるはずだったアントの今回の上場延期の衝撃は大きく、米メディアは「ジャック・マーの当局批判に習近平国家主席が激怒し、アントの上場は中止される」と報じている。
アントはその後、規制を順守する声明を発表し、コンプライアンス責任者を任命するなど、体制の再整備に動いている。
「上場中止」も取りざたされるアントだが、中国の株式市場の活性化を目的に、上海と香港市場を上場先に選んでおり、中国では「半年前後延期される」との見方が多い。ただし、政府がアントの規制強化に動いていることは明白で、事業の成長性については個人投資家の間でも意見が割れている。
筆者:浦上 早苗
早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37。
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