「リストラという考えは1ミリもない」 電通「社員の個人事業主化」の真意、発起人を直撃:230人が応募(1/4 ページ)
電通が希望する社員を個人事業主化し、業務委託することで、一定の報酬を一定期間約束する制度を始める。一部では「体のいいリストラでは?」という声も上がった新制度だが、その真相は。
電通が「新しい働き方」を打ち出した。希望する社員を個人事業主化し、業務委託することで、一定の報酬を一定期間約束する制度だ。この夏、ミドル社員を対象に募集し約230人が応募、2021年1月に運用が始まる。
業績の悪化が伝えられる電通グループだけに、一部には「体のいいリストラでは?」という声も聞こえるこの新制度だが、実際にどのような仕組みで、会社側の意図はどこにあるのだろうか。このプロジェクトの発起人でもある野澤友宏氏(キャリア・デザイン局 クリエーティブディレクター)と山口裕二氏(キャリア・デザイン局 局長補佐)に真相を聞いた。
個人事業主化の真意は?
電通の野澤友宏氏(キャリア・デザイン局 クリエーティブディレクター)。ライフシフトプラットフォーム(LSP)の発起人でもあり、最初に手を上げた応募者でもある。「将来的に業務の幅を広げたいので、個人事業主ではなく法人化する」そうだ
「ライフシフトプラットフォーム」(LSP)と銘打った新制度の概要はこうだ。電通で経験を積んだミドル社員、正確には、新卒なら勤続20年以上かつ60歳未満、中途採用であれば勤続5年以上かつ40〜60歳の社員に応募資格がある。応募した約230人はいったん、電通を退職する。同時に電通は、100%出資で「ニューホライズンコレクティブ合同会社」(以後、NH)という業務の受け皿会社を立ち上げる。
個人事業主として独立した元電通社員たちは、NHと業務委託契約を結ぶ。電通の元社員(メンバー)はNHを通じて、電通を含むさまざまな企業から受託した業務や、NHの他のメンバーが始めようとしている新規事業案件などを、適材適所で担当する。その際の報酬は、固定報酬をベースにインセンティブ報酬が上乗せされる2階建ての考え方で支払われる。
ただし固定報酬部分は、10年をかけて段階的に減らされ、インセンティブ報酬の部分を段階的に引き上げていくそうだ。これにより個人事業主とはいえ、10年間は収入の一定保障を受けつつ、段階的に自立への道筋を歩むことができるという仕組みだ。
その一方で、電通を退職しているわけだから、NH経由の委託業務以外の仕事を個人事業主として行っても「副業」には当たらない。個人で仕事を獲得する能力のある人材であれば、その分は100%、自分の売上となるので、収入を増やすチャンスにもなる。「チャレンジと安心の両立が可能な仕組み」(野澤氏)と胸を張る。
ただ「リストラでは?」という疑問は、簡単には拭い去れない。野澤氏は「リストラなどという考えは1ミリもない。リストラが目的なら、このような仕組みを構築するより、早期退職を募った方がよほど楽だしシンプルで早い」と言い切る。
「NHという前例のない組織を立ち上げ、全てが手探り状態で、社内の知恵を借りながら、2年の準備期間を経て、ここまで何とかこぎつけた」(野澤氏)と言葉の端々に苦労をにじませる。
電通は過去に何度か早期退職優遇制度を実施して“リストラ”を行っている。リストラが目的なら、単純に退職金を割り増すなどして退職者を募集する方が手っ取り早い、ということであろう。
気になるのは、応募者の年収だ。
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