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新人研修で育む、データサイエンティストのコアとなる“書く”スキル事例紹介(1/2 ページ)

データ分析企業のARISE analyticsでは、データサイエンティストとして必要なスキルを育むため、約3カ月の新人研修プログラムを導入している。そのなかで、ビジネスライティング、つまり仕事で使う“書く力”を鍛える研修を導入しているのが特徴だ。

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リクルートワークス研究所『Works』

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 『Works』は「人事が変われば、社会が変わる」を提唱する人事プロフェッショナルのための研究雑誌です。

               

 本記事は『Works』163号(2020年12月発行)「企業で重視する書く力とは。それをどう育むのか」より「新人研修で育む/ARISE analytics」を一部編集の上、転載したものです。


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 ARISE analytics(アライズアナリティクス)は、データアナリティクスやAI、IoTソリューションなどを用いて、企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)支援を行う、KDDIとアクセンチュアの合弁により2017年に設立されたデータ分析企業である。

 設立時は従業員50人ほどだったが、現在では業務委託や契約社員などを含めて 500人規模にまで成長した。「中途採用がほとんどですが、2019年から10人前後の新卒採用をスタートしています」と、同社のChiefWorkstyle Officerの佐々木彰氏は話す。

 「データ分析企業である当社では、入社者のほぼ全員がデータサイエンティストとしての採用です。もちろん、大学や大学院でデータサイエンスを学んだ人もいますが、もともとパイが大きくないうえに人材獲得競争も激しい。ほかの領域を学んできた人も含めて、データサイエンティストとして必要なスキルを育むため、約3カ月の新人研修プログラムを一期生のときから導入しています」(佐々木氏)

 プログラムの全体像は、図の通りだ。入社1日目のオリエンテーションの後、約1カ月をコアスキルトレーニングに費やす。その後約2カ月かけて、データサイエンティストの基礎スキルを学ぶブートキャンプを実施している。コアスキルトレーニングのなかに、ビジネスライティング、つまり仕事で使う“書く力”を鍛える研修を導入しているのが同社の特徴だ。「当社におけるコアスキルトレーニングとは、“どんな業種・職種でも必要になるスキル”と定義しています。ビジネスライティングは、その一つだと考えています」(佐々木氏)

書く準備から実際に書くまでをトレーニング

 佐々木氏によれば、同社でのデータサイエンティストの仕事は、「PCの前でテクノロジーを使って作業し続けるだけではない」という。「技術が根幹の武器であることは間違いありませんが、その武器を使ってどのような価値を提供できるのか、お客さまに提案してはじめて仕事が発生します。そして、データを分析した結果をお客さまに分かりやすく示してこそ、価値を感じてもらえます。最終的な納品物である文書での報告が優れた内容かどうかが、プロジェクトの成否を分けると言っても過言ではないのです」(佐々木氏)。だからこそ、コアスキルを鍛える必要があり、なかでもビジネスライティングスキルは重要な位置付けとなる。

 約1カ月に及ぶコアスキルトレーニングのなかで、ビジネスライティングに費やす時間は、実際には2日ほどだ。「しかし、書くためには準備が必要です。ビジネスライティングを学ぶ前に、その準備のためのプログラムを用意しています」(佐々木氏)

 まず、何を書くのか、自分の考えを整理するスキルとしてロジカルシンキングを学ぶ。キーメッセージは何か。どのようなストーリーラインで話をするのか。これらを検討するためのツールとして、ロジックツリーやMECEなどの型を学んでいく。

 次に学ぶのは、表現のためのツールだ。Microsoft Officeを中心に、メール、議事録、提案書や報告書作成などそれぞれのシーンに合わせて、適したツールを使いこなせるようにする。その後、ミーティングのプログラムでは、ミーティングの目的に合わせた事前準備としてアジェンダの作り方や進行の仕方を学び、それがミーティングで発表する資料を作成するためのインプットとなる。これらを学んだうえで、ビジネスライティングのプログラムで実際に書くことを学ぶ。

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佐々木 彰氏 Chief Workstyle Office

 「まず、メール、資料作成、議事録などのあるべき“型”を教え、そのうえで課題を与えて実践してもらいます。例えば議事録作成の課題であれば、疑似ミーティングを行い、それまで学んだスキルやツールを駆使して、それを実際にまとめてみるのです。その後、講師を含めてミーティングを振り返り、『ミーティングの決定事項はこれとこれだったけれど、これが書けていない』『構成が論理的ではない』など、講師が一人一人にフィードバックします」(佐々木氏)

 この一連のプログラムのほとんどは内製だという。「講師は社会人5年目くらいまでの先輩社員が務めます。1つのパートごとに3人のチームを組み、約3カ月かけて準備してもらいます。ものすごくパワーがいりますが、講師も自身のスキルを言語化する、学びの機会を得るという副産物があります」(佐々木氏)

ロジカルに考えて相手の目線に立てるかどうか

 実際に、学ぶ側にはどのような効果があるのだろうか。

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