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改定された「副業・兼業ガイドライン」を読む注意点は(2/3 ページ)

2020年9月に「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改定されました。より具体的に、踏み込んだ内容になっていますが、その改正ポイントを解説します。

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 基本的な考え方は、副業先についての労働時間の把握は、労働者からの自己申告によるというものです。申告による副業先の労働時間と自社の労働時間を合算して全ての労働時間を把握します。

 時間外労働の割増賃金支払い、36協定書の遵守(じゅんしゅ)等については、自社が負うべき責任を果たせばよいという考え方です。

 以下、すでにA社で雇用契約を行っている労働者Xが、新たにB社で副業する場合について、新ガイドラインに沿って確認してみましょう。

(1) 労働者への確認を行う

 A社、B社とも就業規則を整備して、副業の届出等について規定し、従業員に周知します。A社は、Xに図表3の事項について確認します。Xの申告の内容により、図表2に該当する場合は、副業することを認めないことが可能です。トラブルにならないように、Xに理由を説明して納得してもらいましょう。

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 図表4は、副業をしても労働時間を通算しなくてよい場合です。旧ガイドラインでは、「個人事業主、請負契約」「労働基準法上の労働者でない者」などとしていましたが、新ガイドラインではより具体的な記述となっています。副業がこれらに該当する場合には、A社はいままで通り自社の労働時間管理を行うだけでよいですが、Xは自社以外の仕事も行うわけですから、過重労働にならないように配慮します。

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(2)所定労働時間の通算

 労働基準法で定める労働時間の制限は、原則として1日8時間まで、1週40時間までです。A社の所定労働時間とB社の所定労働時間を通算することによりこの法定労働時間を超えてしまう場合は、後から契約したB社の法定時間外労働となり、B社の36協定書の時間外労働の範囲に納まるように働くことになります。

 新ガイドラインでは、労働時間の起算日についてA社、B社の各々が決めている起算日により通算してよいとしています。

(3)法定時間外労働がある場合

 働き始めてからA社、B社ともに法定時間外労働が発生した場合は、A社、B社、各自が自社の36協定書の範囲内の時間とすることが必要です。労働基準法の時間外労働の上限(1カ月45時間、1年360時間)と、特別条項付36協定の1年間の上限(720時間)についての規定(36条4項、5項)は、事業場単位の規制となるため通算されないとしています。

 ただし、時間外労働と休日労働の合計が1カ月100時間未満、複数月の平均が80時間を超えないという規定(36条6項2号、3号)については、X個人の実労働時間としてA社とB社を通算して管理するとされています。

 なお、休憩、休日、年次有給休暇については、事業場単位の適用となるため通算しません。

(4)労働時間管理の「管理モデル」

 前記のように、時間外労働がある場合等についての労働時間の管理は、A社、B社、申告するXにとっても負担が重いと考えられます。新ガイドラインでは、簡便な管理の方法を「管理モデル」と称して提案しています。

 先に契約しているA社の法定外労働時間と後から契約するB社の労働時間(所定労働時間と所定外労働時間)の合計が、単月100時間未満、複数月の平均が80時間以内に納まるように、あらかじめ労働時間の上限を決めてしまう方法です(図表5)。

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 決めた範囲で労働させる限り、労働基準法に違反するおそれはなくなります。A社、B社それぞれが自社の36協定書の範囲を守り、自社で働いた法定時間外労働について割増賃金を支払います。

 新ガイドラインでは、導入の手続きとしてA社が管理モデルで副業することをXに求め、Xを通じてB社が応じることにより導入されることが想定されるとしています。また、導入後に必要に応じて労働時間の上限を変更することは可能なので、それについてB社に通知しておくことが望ましいとしています。

 このモデルの留意点として、単月100時間未満、複数月の平均が80時間以内を気にするような働き方は、長時間労働の部類に入りますから、上限時間の設定は十分な注意が必要です。

 また、このモデルの場合、B社の賃金が常に割高になり(特に60時間超の割増賃金は5割以上。中小企業は2023年3月まで猶予)、B社はよほど必要な場合以外、受け入れにくいかもしれません。正社員が短時間の副業をする以外に、短時間の勤務をいくつか掛け持ちする場合や休日だけ副業をする場合などもあるでしょう。労働者によく確認して、個別の実態に合った管理の仕方を考えることが重要です。

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