インサイドセールスは「売り込むな!」 成功のカギ、“顧客視点”の持ち方、磨き方:ヴィジュアル系が語る!会社を強くするインサイドセールス(3)(2/2 ページ)
インサイドセールスの仕事は商談を作ることです。しかし「無理なアポイント」を設定することは社内にとっても、顧客にとってもいい結果につながりません。営業(フィールドセールス)やカスタマーサクセスと摩擦を生まず、顧客とも親身に向き合うために、インサイドセールスはどのような意識を持つべきでしょうか。
「カスタマーサクセスの思考」を持て
共通のゴールを目指すため、インサイドセールス担当者は自分の仕事の領域となる商談生成よりも後の工程まで見据えて、顧客に対応する必要があります。そのため、インサイドセールスは、「カスタマーサクセスの思考」を持つことも重要だと考えています。
カスタマーサクセスの思考を理解するために、カスタマーサクセスの役割について紹介します。似た言葉にカスタマーサポートがありますが、役割が異なります。
カスタマーサポートとは、お問い合わせ窓口のような受動的な機能が多く、顧客から問い合わせがあってから初めてアクションする動き方をします。
一方、カスタマーサクセスは、自社サービスを契約いただいた顧客に対して能動的に、役に立てることがないかを常に考え、時に顧客が気付いていない課題を発見し解決に導く提案をしていきます。そのためには顧客の業界理解はもちろん、定期的なコンタクトを続けて信頼関係を築いていくことが必要です。
サブスクリプション型のサービスを提供している企業でカスタマーサクセスの組織はよく存在しますが、前回の記事で書いたように、長くサービスを利用し続けてもらうためにはカスタマーサクセスの動き方、マインドはとても参考になります。
売り込むな。お客さまを成功に導く提案をしよう
顧客との出会いの入り口にインサイドセールスがあり、商談・契約の工程が済んだ後にカスタマーサクセスの任務が始まりますが、目指すゴールは同じ「顧客が幸せになること、成功すること」です。
そのためにカスタマーサクセスは常に顧客視点を持つことが重要ですが、それはインサイドセールスも同じなのです。インサイドセールスがコンタクトをしている時点で、契約していただいた場合、自社の商品・サービスは顧客にとってどのように力になれるのかを考え、仮説として伝えていくことが大事です。
よく、悪い営業の例として商品・サービスの機能や仕様の説明ばかりしてしまうケースがあります。それだけでは顧客は契約をすることで何が解決できるのかイメージできないことがあります。
何を解決できて、どのような成功をもたらせるのか。具体的なイメージを持ってもらえるように話を伝えることが重要です。そのためにはインサイドセールスも、見込み客それぞれ個別に、どのように自社の商品・サービスが貢献できるのか、契約後に顧客が成功するイメージを持てるようになりましょう。
顧客視点の持ち方、磨き方
顧客が成功するイメージを持つ。言葉で言うのは簡単ですが、本当に実現するには顧客理解を深く行う必要があります。もちろん業界知識が必要です。
私は32歳までミュージシャンで、ビジネスパーソンとしての経験がありませんでした。音楽ばかり勉強していたため、当然顧客のビジネスを理解するための業界知識など全くなく、インサイドセールスを始めた当初は、とても苦しみました。
例えば、メーカー、卸売、小売、消費者といった流通に各社がどう関連しているのかが明確にイメージできませんでしたし、事業会社と代理店の関わり方、大企業におけるグループ、部署の在り方などもよく分かりませんでした。
当然、こんな状態では顧客理解どころかビジネスパーソンとしての会話すらかみ合いません。
どのようにキャッチアップしたかというと、とてもシンプルですが勉強し続けました。毎日『日経新聞』を隅々まで読み、『ガイアの夜明け』や『カンブリア宮殿』といったテレビ番組は毎週必ずチェックしました。専門知識を付けるための読書は月10冊以上は必ず行いました。
これを現在も続けていますが、ある時から見える世界が変わってきました。得た知識がつながり、顧客の仕事が想像できるようになり、そこに自社サービスがどう関われるのか、明確なイメージを持てるようになったのです。
もちろん、このようなことは習慣として当たり前にやっている方も多いと思いますが、もし当時の私のような全くの未経験の方が周りにいるようであれば、勉強のやり方から教えるのが良いと思います。意外と行動する人は少なく、そこから継続できる人はさらに少ないものです。勉強を継続するだけで、追い付くことができるということを私は実感しました。
そして、顧客や同僚に感謝してもらえる機会が増えていき、その変化や自分の成長を楽しめるようになると、勉強や仕事はより有意義なものになると感じています。
インサイドセールスはこういった勉強の結果を業務に反映させやすく、思考することを楽しめる仕事だと私は思います。
それでは今回はここまでです。最後まで読んでいただきありがとうございました。また次回の記事を、楽しみにしていてください。
著者プロフィール・堤貴宏(つつみたかひろ)
ホットリンク マーケティング本部インサイドセールス部。
高校卒業後13年間ヴィジュアル系バンドのギタリストとして活動、引退したのちビジネスマンに転向。2社での経験を経てホットリンクに入社。一貫してインサイドセールス職に従事している。「ヴィジュアル系インサイドセールス」の肩書でSNSやイベント登壇を行っている。
Twitter:@hotto_mihiro
Voicy:聴け、ビジュアル系の叫び
楽曲:インサイドセールス・ラプソディ/インサイドセールス・レボリューション
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