コロナ後にカギを握るのは? 米国、食品スーパーの動向:さまざまな取り組み(4/4 ページ)
米国の食品スーパー業界にも、デジタルの波がやってきている。いや、アマゾンが2017年にスーパーの「ホール・フーズ」を買収したころから、競合他社の多くが危機感を抱き、動き始めている。では、どういった動きをしているのか。まとめてみたところ……。
食品スーパー業界は転換期に
そして、大手スーパーが取り組んでいる定額制サービスよりも、Amazonプライムに対抗した会員制プログラムを提供しているのがウォルマートだ。20年9月から開始したばかりの「Walmart+(ウォルマートプラス)」は、年間98ドルの会費を払うと、さまざまな特典を受けることができる。
生鮮食品を含む16万点以上の商品の当日配送が無料になるだけでなく、一部の店舗でガソリンの割引も受けられる。さらに、ウォルマートのアプリ上にある「Scan & Go」という便利な機能を使うことができる。
この機能は、顧客自身が店内で購入する商品のバーコードをスマホを使ってスキャンしながら移動し、最後にセルフレジでバーコード決済することができるサービスだ。レジでの待ち時間が短縮できることや、タッチレスなサービスを望む顧客には便利な機能になっている。また、店頭とオンラインでの体験がよりシームレスに感じるように、アプリを使いやすく設計しているのが特徴となっている。
だが、取り扱い商品の多さに加え、映画や音楽などエンターテイメントサービスまで提供しているAmazonプライムと比較すると「Walmart+」の特典は少し物足りないかもしれない。それでもウォルマートは、生鮮食品などネットスーパーの分野においては、圧倒的なネットワークを持っているため、大きな強みになっている。
食品スーパー業界は、利益率が低いことで知られているため、これまでいかに買い物客の滞在時間を伸ばして売り上げを増やすか、知恵を絞ってきた。しかし、コロナにより、これまでとは違うビジネスアプローチが必要となる転換期にきている。
食品スーパーは、リテールの中で最大のカテゴリーでありながら、オンライン化が進んでない業界のため、ネットスーパーの発展は大きなビジネスチャンスとなっている。ただ消費者の日常生活に密接に関わっているため、そこは強みになりえる。食品スーパー業界がこれからどんな進化を遂げていくのか期待したい。
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